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ヤマハFZ250 PHAZER(フェーザー)1985年式 レストア記

S2000オーナーが S660 6MTに試乗、再レビュー(2) 野性を取り戻せ

2015.07.16

S660の6速マニュアルを借用してワインディング、首都高速、高速道路を走行し、得意領域、いいところが分かりました。

前編 S2000オーナーが S660 6MTに試乗、再レビュー(1) なかなかいいんじゃないの?【ワンダードライビング】

一方でMT/CVT両モデルで共通して感じた課題も明確になりました。その課題とは何か、そしてどうしてそうなったのか、考察を交えてひも解いてみたいと思います。

CVT試乗 S2000オーナーがS660に試乗して落胆した話【ワンダードライビング】


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リアリティの欠如

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もっとも問題なのは、ハンドルに手応えがない点。軽くて切っただけ曲がるには曲がるのですが、ステアリングインフォメーションが皆無といってもいいほど。そのために走っている、いや、走らせている「実感」を伴わないのです。

軽すぎで、停止中もそのままグルグル回せるハンドルは

フォースフィードバックのないゲームハンドルのようだ」

とか、

「まるで雲の上を走っているみたい」

と言われたり。

ゲームみたいという指摘でいえば、これは世界初の体感ドライブゲーム「OUTRUN」のようで、ハンドルを切ったらスイッチのように曲がり、ある程度以上はタイヤが鳴って曲がらなくなるところまでそっくり。今はグランツーリスモなどゲームであってもフォースフィードバックでよりリアリティを追求していますが、そのフィードバックがステアリングにないのです。

スポーツカーの場合は特にタイヤのネジレ、路面のザラザラや凹凸を伝えてもらって、路面とのコンタクトを手のひらで感じ取りたいのに、それがとにかく薄いです。だから走っている実感、リアリティがありません。

リニアリティの欠如

ステアリングを数ミリ入れた領域では反応せず、そこからさらに入れていくと遅れてヨーが突然立ち上がる、リニアリティのないステアリングフィールとなっています。

高速道路ではステアを左右に入れてみると、ユラユラとボディが揺さぶられ、まるで重心の高い船のようなフィールとなり、水すまし感覚、フラットライドでノーズがインを向く感覚はありません。

ロール自体が悪いわけではありません。ロールは荷重移動に必要なもので、ロールスピードとロール量、前後バランスがとれてコーナリングができるからです。しかしこのS660は最初無反応で、突然すとんとロールするのでアレと思うわけです。

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(後ろ2点でしか支持してない、ステアリングラックの剛性も気になる...)

謎のアジャイル・ハンドリング・アシスト

中速コーナーで一定の舵で曲がっていくようなところはAHA(アジャイルハンドリングアシスト)の動作音なのか

「カツカツカツ」

といった、ABSが作動するような音がすることがありました、気のせいかもしれませんが。

というのもこの音がしてすぐさまクルマの挙動が大きく変化することはなく、ステアリングにも大きなフィードバックがないためです。

なおAHAの介入条件、S660にAHAを装備した理由についてホンダに質問したところ、

回答できません

とのことでした。いつ、どれくらい効いているのか、謎が深まります。

横G(横力)がかかった時、ブッシュがつぶれてステアリングが外を向くコンプライアンス・ステアはヨーモーメントを弱めますが、内輪にブレーキをかけるAHAはヨーモーメントを作る方向で真逆の操作です。ですからAHAは横力の弱い領域、ステアの切り始めだけ、などに作用すると思われますが、この部分でもステアリング操作に対する「リニアリティ」が担保されません。


ピーキーなハイグリップタイヤ

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S660に装着されるタイヤはハイグリップタイヤ、アドバン・ネオバ。フロントに165サイズ、リアに195サイズを履くことで「絶対にリアをブレークさせない」という意思を感じましたが、その結果峠で問題となったのは終始フロント。完全にフロントタイヤのグリップが不足。

ステアを入れてフロントに荷重がかかりロールしはじめますが、その次にリアに荷重がかかり、4輪でコーナリングをする前にフロントが限界にきてしまうのです。

峠の上りヘアピンではアンダー、下りで回りこんだコーナーは特に苦手でド・アンダー。上りはフロント荷重の欠如、下りでは外輪荷重が強過ぎてアンダーとなっているようです。

その時も乏しいステアリングフィール、「タイヤとの対話」がないので、突然限界を越えるんですね。曲がらないから余計にハンドルを切ったりすると、タイヤをこじる典型的なダメコーナリングパターンですが、そうなりがちです。その結果、ハンドルの舵角が意外にも大きく、FFのそれと変わらないどころか、かえって大きい場面もありました。

ではこれがハイグリップタイヤ、アドバン・ネオバではなく、普通のタイヤだったらどうでしょうか。

この曲がらない状態はもっと手前できてしまい、コーナリングが破綻します。だからアドバン・ネオバでなくてはならなく、タイヤのグリップ力に頼り切ったコーナリングといっていいです。

これは昔、ほぼノーマルサス(KYBのクライムギアかSRスペシャル)のEF8 CR-XにSタイヤ、アドバンA032Rを履いた時のような挙動。ハンドル入れれば曲がるものの、サスはひょこひょことストロークして、決してシャシーで曲がっているのではない状態。全体のバランスがとれてません。

後輪駆動らしさの欠如

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後ろ脚で蹴る感覚、つまりはトラクションですが、その感覚が薄いんです。

上りのヘアピンではTRC(トラクション・コントロール)が介入してパワーが活かせません。TRCをOFFにしたところで軽自動車自主規制の64馬力ではパワー不足、ターボラグによるレスポンス不足が解消するわけでもなく、内輪がむなしく空転するだけ。

空転を抑えるためにはLSDが必要ですが、現在オプションでも用意されず、今後の発売についての情報はありませんでした。

なぜこんなセッティングなのか

なぜこんなことになっているのか。それは推測ですが、ホンダはわかっていて、あえてそうセッティングしたからだと思います。

目線は低いし、ハイグリップタイヤでコーナリングも速いから誰が乗っても

これは背高軽自動車とは違うぞ、エンジンも後ろについているし、五月蠅いし、リアルスポーツカー!

と分かります。

その上でハンドルが軽いのは、背高軽自動車に乗る非力なお年寄りや女性でも車庫入れが楽なように。

ステアリングが最初反応しないのは、背高自動車に慣れたドライバーが雑にハンドルをいじっても大丈夫なように。

コンプライアンスステア、VSA/TRCの制御でどんなスキルのドライバーがどんな操作をしても絶対にスピンしないようにしたと推測されます。

ドライバーを信用していない

一見さまざまな安心・安全装備で手厚くサポートしているように思えますけど、実情はこうでしょう。

メーカーはドライバーを信用していない

ホンダに限らず、日本車メーカーは基本的にその姿勢で、様々な安全装備、電子制御を導入しています。そのおかげで老若男女、スキルの有無を問わず、誰でも安全に運転ができるというわけです。確かに安全を優先させるのはメーカーの姿勢として正しいです。ただしそれは程度問題ではないでしょうか。

S660で問題となるのはこれが「スポーツカー」を謳っているにも関わらず、ミニバン、コンパクト、背高軽自動車と同じ発想で作られているということ。

つまり運転者は下手でミスをするものだから、クルマ側でなんとかしてやろうという発想です。その結果何が起きているかというと、主従関係の逆転です。

主従関係の逆転

人貨を運ぶ荷物車なら主従が逆転しても仕方ありません、なぜなら目的が移動・運搬だからで、その目的を達成するためにドライバーがいるから。タクシードライバーもトラックドライバーも「従」業員です。

スポーツカーはその対極にあります。スポーツカーの目的は移動・運搬ではなく、運転すること自体が目的だからです。

GT-Rを開発した水野氏は人間とクルマの主従関係について、こういっています。

主は人間で、従がクルマ。人とクルマの一体感とは:日産GT-R 水野和敏氏インタビュー(1)【ワンダードライビング】

ツーといえばカーといえるのが友達。共感性がとても大事。 主は人間で、クルマは従の関係。

S660の場合「スポーツ」、しかも「ガチスポ」を謳っているにもかかわらず、ドライバーを信用せず、どんなスキルの人でも簡単に、速く運転できるようにしています。そのためのアンダーステアセッティング、コンプライアンス・ステア、TRCだったりしています。しかし本来スポーツカーはドライバーのスキル、ドライビングテクニックを反映する鏡であり、ドライバーの意思どおり、操作どおりに動くべきです。

しかしどんな下手くそが運転するか分からないんだから、クルマ側が制御して安全にしてやろう、というホンダの親心(母心)が見えます。

S660は主がクルマで、従がドライバーなのです。

本来クルマがしなければならないのは、今何がどうなっているのか、明確に伝えること、です。つまり危険が迫っているのかどうか、操作をしなければならないのかどうか。ドライバーの認知・判断・操作の助けとなる部分が大事です。

ところがこのS660はどうでしょう。ステアリングインフォーメーションが皆無なのも、その部分を大切にしていないから。ようは路面の状況、タイヤの状況をドライバーに伝える、ドライバーが知ることよりも、車庫入れの楽さだったり、誰でも運転できることを大事にしたということです。

過剰な母性がクルマをダメにする

参考 なぜクルマが売れなくなったか?(序章)過剰な母性がクルマ社会をダメにした - のまのしわざ

つまり、ホンダの親心、母性が強過ぎる結果、ドライバーを子供扱いしているんですよね。遊んでいいよといっておきながら、

「○○ちゃん、危ないからそれ止めて、これやっちゃだめ。」

その結果なーんもできないし、やる気もなくなります。檻の中に閉じ込められた動物みたいな感じ。この狭いプレイグラウンドの中で自由に遊んでいいよ! っていったって、狭すぎる、もっと広い場所を走りたいのに。というかそれ、自由って言わない!

スポーツカーというのは野性なんです。背高軽自動車、ミニバン、コンパクトカーとは価値観がまったく異なるものなのです。凶暴性、暴力性をともなわないのであれば、どこに存在価値を求めればいいのでしょう。

動画レビュー


(ワインディング走行直後の感想)

野性を取り戻せ

ここからは提案です。別にS660のすべてがダメといっているわけではありません。ハンドリングの部分で主従関係が逆転している点、母性が強過ぎる点がスポーツをスポイルしているだけです。ですから、主権をドライバーに戻して欲しいのです。あくまでも車両、電子制御は「従」、アシストだけに留まってほしい。

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具体的にはステアリング系にリニアリティとリアリティを持たせてほしいです。つまり走っている実感をより強く、クルマとの一体感を。EPSだとどうしてもヘナヘナになるということであれば、ノンパワステでいいじゃないですか。最新のアルファロメオ4Cだって900万円もするのに、ノンパワステです。

介入条件を開示できないAHAは、不気味なので完全OFFに。

介入しまくりの電子制御VSA/TRCの完全OFFボタンを。つまり「うるせえ、お袋はひっこんでろ」ということです。

いいお手本がホンダにはあります。それは野性味あふれるビート。

S2000オーナーのビート試乗記。震えるぞハート、燃え尽きるほどビート! 【ワンダードライビング】

もっとビートらしく、クルマに乗せられているのではなく、走らせる実感を。

バーチャルな「リアルスポーツ」ではなく、リアルな「スポーツカー」を。

これまでビート、NSX、S2000、type Rシリーズを輩出したホンダならそれができると信じてます。


この記事を書いたライター

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のりものブロガー

野間恒毅

スーパーカーと美女が好き。 日々RR, FR, FFと駆動方式を選ばずドライビングスキルを磨き、ドライビングプレジャーを追い求めています。リターンライダーとして大型二輪免許取得、大型バイクに乗っています。ミニ四駆、ラジコン、ドローンなどホビーも幅広くカバーしボート。個人ブログはこちら(のまのしわざ


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