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ヤマハFZ250 PHAZER(フェーザー)1985年式 レストア記

やる気にさせるドライブトレーン! SiFo ルノークリオRS CUP 試乗レポート(2)

2011.08.23

究極の空力性能! SiFo ルノークリオ(日本名:ルーテシア)RS(ルノースポール) CUP 試乗レポート(1)【ワンダードライビング】のつづきです。

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ルノークリオ(ルーテシア)RSのエンジンはF4Rと呼ばれる型式で2000cc。F4自体はメガーヌRSと同じですが、メガーヌはターボで過給、こちらのクリオはNA。ボア82.7 mm x ストローク93.0mmとロングストロークです。

RENAULT JAPON | ルーテシア ルノー・スポール 仕様一覧

エンジン形式 F4
エンジンタイプ 直列4 気筒DOHC 16バルブ
総排気量(L) 1.998
内径 X 行程(mm) 82.7 × 93.0
燃料供給装置 電子制御式マルチポイントインジェクション
最高出力(kW(PS) / rpm) 148(202)/ 7,100
最大トルク(N・m(kgm) / rpm) 215(21.9)/ 5,400

ロングストロークといえば基本的にはトルク型のエンジンなのですが、そこを高回転型にチューン、202馬力/7100回転、215Nm/5400回転を発揮します。逆にいうと無理矢理感がないわけでなく、低回転から高回転に至るまで全域でパワーが出るように工夫しています。

スペック自体はホンダのシビックタイプRユーロ、K20Aエンジンと近いですが、こちらは86mm x 86mmのスクエア型で 201馬力/7800回転、193Nm/5600回転でより高回転型です。

Honda|シビック TYPE R EURO|Specification

■エンジン型式:K20A
■エンジン種類・シリンダー数及び配置:水冷直列4気筒横置
■弁機構:DOHC チェーン駆動 吸気2 排気2
■総排気量:1,998cm3
■内径×行程:86.0mm×86.0mm
■最高出力:148kW[201PS]/7,800rpm*
■最大トルク:193N・m[19.7kgf・m]/5,600rpm*

ルノーのF4Rエンジン高回転化に対応しての工夫ポイントその1

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エンジンを取り囲むようにとぐろを巻いているのが吸気管。ところがエンジンの前にきている長いのとは別に右側に短いのがあります。あれ、吸気管が2つ?

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しかも短い方の入り口になにやらバルブがついているのがミソ。実はこちらは高速側の吸気管で通常はバルブは閉じています。その場合はレゾネータの役割を果たすのですが4000回転以上になるとバルブが開き、こちらからも吸気するようになるというのです。もちろん吸気音も倍増、レーシーな気分を盛り上げます。

工夫ポイントその2:4-2-1のエキゾースト

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エキゾーストマニホールドは等長の4-2-1タイプ。ノーマルなのにとぐろをまいていてこちらもレーシー。後方排気エンジンで見えにくいのが残念。4-2-1集合タイプはトルクに有利で、管の長さが等長なのは排気干渉が少なくなり、スムースにエンジンが回ります。高回転化という意味では4-1集合タイプの方がより有利なのですがそこは下も欲しい、というルノーならではの考え方が見えますね。

工夫ポイントその3:エンジンマウント

ルノーが採用しているのはペンデュラム(振り子)方式のエンジンマウント。

深遠なるエンジンマウントの技術世界! 重心支持式、慣性主軸式、ペンデュラム方式とトルクロッド ([の] のまのしわざ)

ペンデュラム懸架方式は2つのエンジンマウントと1つのトルクロッドで懸架しますが、特長としては左右マウントの軸がエンジン重心軸と一致するように配置され、エンジン下部のトルクロッドでエンジンのロール(前後方向の動き)を止める働きとなっています。

特徴的なメガネ型トルクロッドはエンジン下部に配置されるのですが、フロントディフューザーでその姿は拝めません。
ところがエンジン上部にもなぜかあるんです、トルクロッドが。

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しかもがっちりと。

エンジンを留めている箇所の真下に本来のエンジンマウントがあるというのに、さらに念には念を入れてます。みるからに頑丈そう、かつコストをかけたロッドです。

さてこれはどういうことかというとエンジンの振動をさらに止めたい、という気持ちの表れ。多少エンジンがブルンブルンしてロスがあってもエンジンパワーがあるから大丈夫、なんて貴族的アプローチとはまったく逆。

エンジンマウントが弱くても、パワーをあげればいいじゃない!

ではいかんのですよ。庶民的アプローチでエンジンパワーを一滴も漏らさず、すべて路面に伝えようとしています。さすがは市民革命を成功させたフランスです。

だからといってエンジンの振動や騒音がガンガン入ってくるわけでもなく、快適だったのでご安心を。

このルノー・スポールチューンに加え、このSiFo仕様ではさらにチューンしてあります。

【SiFoチューンその1:アクラポビッチ・エキゾーストシステム】

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LUTECIA/Clio3 RS専用ステンレスエキゾーストシステム AKRAPOVIC(アクラポビッチ)製 - atelier SiFo

バイクで定評のあるスロベニアのアクラポビッチ・エキゾーストシステムを装着。Evolution Systemというセンターパイプから交換するタイプでは 8馬力、13Nmのパワーアップ、重量は7kg軽量化。

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サイレンサー部分はカーボンディフューザーに隠れてしまっていますし、マフラー出口もブロウンディフューザーで存在感を主張しません。

しかしその存在はアクセルを踏みこめば、即座にわかります。アクセル全開で一気に盛り上がる排気音、そして7500回転のレブリミットまで一気に吹けあがります。普通レブリミット手前でパワー感がなくなって自然にシフトアップするのですが、まるでロータリーエンジンのようにまったく衰えがありません。ピーというシフトアップ警告音が鳴らなければレブリミットに気付かないほどです。

この高回転での伸びは、まさにバイクっぽいですね。

【SiFoチューンその2:NAG クランクケース内圧コントロールバルブ】

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エアクリーナーボックスについている謎の管。はて、これは一体なんのためについているでしょう?

これはクランクケース内圧を低く保つ「クランクケース内圧コントロールバルブ」です。

ルノー京都CADONO|クランクケース内圧コントロールバルブ(NAGバルブ)

クランクケースとはシリンダーの下にありピストンを上下させるコンロッド、コンロッドが接続されているクランクを収めているケース。ピストンの上下により実はこのクランクケースの内圧が変化しているというのです。

株式会社NAG S.E.D.オフィシャルサイト【製品情報:内圧コントロールバルブ】

単純に考えればピストンが下がればケース内が一時的に高圧に、ピストンが上がれば負圧になります。

市販エンジンにはこの圧力の変動を吸収するためにクランクケースにブリーザー穴が開けられており、ピストン下降とともに高まった余剰圧力は排出され、ピストン上昇とともに再び外気を吸い込むようにできています。

ブリーザーによってクランクケース内は一定の気圧に保たれる・・・と考えられがちですが、実際にはピストンの上の燃焼室では絶えずガスが燃焼を繰り返してピストンを押し下げています。 その超高圧のガスがクランクケース内に流れ込まないようにピストンにはピストンリングがはめ込まれてはいますが、どうしても一部のガスがリングを通り抜けて(吹き抜けて)クランクケース内に入り込んでしまいます。

これをブローバイガスと呼びます。そうしてクランクケース内はこのブローバイガスによって圧力が高まります。
圧力の高まったケース内にピストンが下がろうとすれば、当然強い力で反発を受けてしまいます。これがいわゆる「ポンピング・ロス」と呼ばれる抵抗です。

(ブリーザーからこのブローバイガスは排出されますが、ピストン上昇と共に空気をどうしても吸ってしまうため、クランクケース内の圧力は高止まりしてしまうのです)

クランクケースが高圧になってしまうとこのポンピングロス(=エンジンブレーキ)により出力の損失を生じるため、クランクケース内は減圧されていることが望ましいのです。

Honda Technology | ゆとりある走りと低燃費を両立するHondaのVCM

■ポンピングロスとは

ピストンが吸排気するときの空気抵抗。
特に吸気は、スロットルが閉じていると大きい。

ポンピング・ロス」とは燃費向上でも注目されており、各社様々なアプローチで減らそうとしています。

【ホンダ『モビリオ・スパイク』発表】技術解説「大量EGRシステム」 | レスポンス (エコカー、燃費のニュース)

ポンピングロスとは、スロットルバルブによって吸気経路が狭められ、発生した吸気抵抗がピストンのポンプ運動を妨げ、エンジンの回転抵抗となる現象だが、この大量EGRシステムは、スロットルバルブを経由しない吸気に排気ガスを大量に導いてポンピングロスを減らし、燃費を低減する、というもの。

スロットルバルブがちょっとしか開いてないと空気が吸い込めず、ピストンを引き下げる運動を妨げます。もともとEGR、排ガス環流システムは排ガスに混じっている未燃焼ガスを燃やすことで燃費をよくし、排ガスをクリーンにするために開発された技術ですが、排気から吸気側に大量の排気ガスを送り込むことで空気を増やし、ピストンを下げやすくするもの。

スロットルは開けているほうがポンピングロスは減りますが、逆に吸気バルブを閉じ切ってしまうのも手です。

Honda Technology | ゆとりある走りと低燃費を両立するHondaのVCM

燃焼を休止する気筒でバルブを閉じると、
その気筒は吸排気をしなくなります。
したがって、エンジンが回る抵抗のなかでもっとも大きい
ポンピングロスがなくなります。
それが、気筒休止による燃費向上の最も大きな理由です。

■バルブを閉じたら抵抗になるのでは?

密閉した空気をピストンで縮めると、 たしかに抵抗があります。 しかし、膨張するとき、縮んだ空気が ピストンを押し返すためプラスとなり、 合計するとロスはほぼゼロになり、 ほとんど損失はないのです。

さらにスロットルバルブ自体を無くして直噴化するのもひとつ。最近のガソリンエンジンの直噴ターボ化はポンピングロスが少ないという点でもメリットがあります。

以上は吸気側、ピストンの上側のポンピングロスのアプローチ。こちらはピストンの下側、クランクケース内のポンピングロスのアプローチです。

この恩恵がとても大きいのはバイクのエンジン

モーターブレスシステム|製品紹介|アエラ

★ 強力なバックトルクを自然なエンブレに!
★ 車種や乗り方によって、最高30%の燃費向上!
★ 加速が鋭くなり、高速のノビが良くなる!
★ エンジンのピックアップが良くなり、振動も軽減!
★ アクセルの開閉によるギクシャク感がマイルドに!
★ ギアチェンジがスムーズになる!

(中略)

4サイクルエンジンのエンジンブレーキは2サイクルに比べて強いのはご存じのとおり。
もし4サイクルエンジンでクランクケース内圧を低く保つことができれば、過度なエンジンブレーキの不安はなくなります。
さらにフリクションの低減は、走りが良くなったり、振動が減ったり、燃費が良くなるなどのメリットを生むのです。
それを実現したのが、このモーターブレスシステムというわけなのです。

とくにドゥカティのL型ツインように、ひとつのクランクケースを共用するエンジンは構造上、ケース内の圧縮抵抗が大きく、だからこそ"内圧コントロールバルブ"の効果が大きいと言えます。
装着によって抵抗が減少し、機種によっては200~500回転もアイドル回転が上昇する場合があるほどです。

一般的にはたいした圧力とは考えられないようなクランクケース内圧ですが、オイルを入れ過ぎてしまったときにエンジン回転上昇が重くなったように感じたことのある人は多いはず。
逆にオイルが減ってきたときに、軽く回るように感じるのも、ピストン下降時に圧縮されるクランクケース内の空気量の違いによるものです。

ポンピングロスとは、実はこのようにごくわずかな空気ボリュームによって左右されているのです。
そこでクランクケース内圧をコントロールして圧力を最適に保つことで、エンジンブレーキが低減され、コーナー進入がラクになるなどの大きなメリットが得られます。
そればかりか、低回転域からのエンジン自体の回りかたも滑らかになるのです。
まるでエンジンをチューニングしたような全域にわたるトルクフルなフィーリングの変化。

確かに4ストバイクの場合、アクセルオフ時の強力なエンジンブレーキにより車体がインに傾き過ぎたりという経験があるので、これがマイルドになるのは嬉しいかもしれません。さらに燃費がよくなるなら、もっと嬉しいです。

ただ単気筒エンジンであれば差が激しそうですが、マルチシリンダーだと下がった時他の気筒があがるので余り効果がないのでは、とも思います。

株式会社NAG S.E.D.オフィシャルサイト【製品情報:内圧コントロールバルブ】

また、単気筒では確かにクランクケースの容積が変わってしまいますが偶数多気筒エンジン(2気筒・4気筒・6気筒など)で逆位相クランクを持つものは、一つのピ ストンが上がったときに隣り合うピストンが下降するためクランクケースのエアボリュームがバランスする筈だという理屈がありますがこれも必ずしもそうと断言はできません。

なぜなら慣性力を持った空気が狭い隙間をぬって移動する速度は限りがあるからであり、ケース内のエアフローを考慮したエンジンはまだまだ少ないからです。 無論クランクケース内の空気が動かなければ多気筒とは言え単気筒の集合同然で、ポンピングロスが生じてしまいます。以上のことを踏まえて、クランクケース内をあらかじめ減圧しておくと言うことは、レシプロエンジンの効率を高める上で効果があると考えられるのです。

考えてみれば1分間に7000回転以上ですからね、結局空気も流体なのであっちにいったり、こっちに戻ったりというのはなかなかしずらく、実際には圧力が高どまりしてしまうのでしょう。そうなると自動車用の多気筒エンジンでも効果がありそうです。

現在ではラムエアーエアクリーナーボックスの負担を軽減するブローオフバルブや、オイルがゲル状化してバルブが作動しなくなるエマルジョン対策もされており、安定的な性能を発揮できます。

SiFo仕様ルノークリオRS CUPにはクランクケース内圧コントロールバルブが最初からついていたので、装着前・後の差はわからず。エンジンブレーキの効きが弱くなるということですが、確かにもしかしたらアクセルON/OFFでのスムースさはエンジンマウントがしっかりしていることとあいまって、このへんから来ているのかも知れませんね。

【新開発6速ミッション】

このスムースなエンジンパワーをタイヤに伝える重要な役割を果たすのがミッション。クリオRSではルノー・日産が共同開発した新しい6速ミッションが採用されています。

リバースは1速の左側、リングを上に引きあげて入れるタイプなので1速に入れようとして間違ってリバースに入っちゃうとかありません。その昔ダート仕様AE111で1速いれようとしてRに入ってしまい、バックランプが点灯して「神岡ターン!」とギャラリーにウケたことがありましたが、その心配はないわけです。

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この6速ミッションがすごくいいんですよ。カチッとしたフィールで正確に入るのはもちろん、シフトチェンジのときにギアを抜く時の素直さ、そして次のギアにシフトが入る瞬間まるで「吸い込まれるように」軽くシフトに手を添えるだけで入っちゃうんです。これはいちいち気持ちイイ、意味もなくシフトチェンジしたくなるほど。

ペンとギアをニュートラルに出して、次のギアにカクンと入れる、この一連の動作がとても楽しいし素早く正確。2000cc 200馬力とハイパワーですがトルクはNAらしく200Nmほど。そうなるとこのトルクを活かしてシフトすることになりますが、適切なギアを選択してエンジンを4000回転以上キープすると、アクセルに反応してグイグイ車を前に引っ張りだします。このへんはターボのモリモリくるのとは違うフィールで、回転数に比例して高まっていくのが気持ちイイです。メガーヌRSのターボパワーも気持ちいいですが、高回転でトルクが落ち込む傾向。一方クリオはNAらしく、7500回転のレブリミットまで突き抜ける爽快感があります。6速ミッションを駆使してエンジンパワーをフルに使いきってやる、なんて気にさせます。

【クロスしたギア比】

そんな気持ちよさを支えるのが、絶妙なギア比。1速から6速までクロスしてパワーバンドをはずしません。6速100km/h時の回転数は3000回転、4-5-6速で高速道路を、2-3-4速でワインディングを気持ちよくつなげていくことができます。

このどれもが、結局は「エンジンの限られたパワーを最大限に路面に伝えよう」という方向性で一致しており、ある意味「モッタイナイ精神」を具現化しているとも言えます。そんなところも庶民感覚ハンドリング市民革命的だよなあと納得する次第です。

お次は使い勝手テスト、題して「若奥様チェック!」です。お楽しみに!

つづく)⇒若奥様チェック! SiFo ルノークリオRS CUPの使い勝手はいかに? 試乗レポート(3)

車両提供SiFo.jp


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