Honda グロム2016年モデル試乗:今もっとも熱い125ccクラス
2016.09.22オートバイの排気量区分は非常に複雑。いわゆるナナハンと言われる750ccクラスは大型バイクで、大型二輪免許が必要。その下のクラスは昔は中型、今は普通二輪と言われるもので、400ccまで運転可能です。
250ccより大きな排気量のオートバイは車検が必要で、車検ごとに整備や税金、数日間出す必要があるなど手間もコストもかかります。
そこで人気なのが125cc〜250cc以下のオートバイ。この排気量だと車検は不要、高速道路にも乗れるのでツーリングから街乗りまでオールラウンドにこなせます。
125ccは原付自転車
今回の注目は125cc以下のオートバイ。50ccまでを原付一種、50cc〜125ccを原付二種と区別していますがどちらも「原動機付き自転車」であり、高速道路は乗れません。
50ccエンジンのいわゆる原付が30km/h制限なのに対し、二種の125ccの方の制限速度は他の自動車と同等の60km/h制限なので、混合交通でも流れにのって走ることが可能。維持費は原付並みなので経済性と高い自由度とあいまって注目されているクラスです。
任意保険はマイカーがあれば「ミニバイク特約」を使うことで、新たに契約する必要がないところも経済的。
ホンダ・グロムの登場
ただし免許は原付一種と違い、二輪免許(小型以上)が必要。セカンドバイク需要として、大きめのオートバイをもつバイカーたちに人気だったこのクラスに、先進的なデザインをまとったグロムが登場しました。ストリートファイター、モタード的なデザインのグロムは生産国となるタイ(名称:MSX125)だけではなく、日本でも一躍人気に。
今回試乗するのはそのマイナーチェンジ版、最新の2016年モデルです。
エクステリア
作りはとても丁寧で、サイズをおいとくと125ccクラスとは思えない完成度。
液晶デジタルメーターは先進的なイメージを与えます。
マイナーチェンジ前はプロジェクターだったヘッドライトは角形2眼式となり、ロー、ハイともにLED化。クラスを超えた贅沢装備です。
高級感あふれる鮮烈な白さが特徴ですが、人間の目は黄色に反応しやすいので青成分の強い白い光はかえって明るく感じにくいのが難しいところ。街中で走る分には十分な光量ですが、明るいとまではいきません。
安全性を考慮し、フロントウィンカーは常時点灯です。
給油タンクはキーカバーつき、ヒンジつきキャップ。これまたクラスを超えた装備。
フロント2ピストン、リア1ピストンキャリパーを装備するディスクブレーキ。これまたクラスを超えてます。
エンジンは単気筒、ほとんど真横についている空冷。冷却フィンが縦になっているのが不思議で、他のエンジンとシリンダーは共通のためでしょうか。
燃料噴射はキャブレターではなく、PGM-FI採用により燃費とパワーを両立しています。
マフラーはマイナーチェンジ前がアップマフラー、シート脇にあったものが、マイナーチェンジでダウンマフラー、タンデムステップの下になりました。荷物や同乗者のことを考えるとこちらの方が気楽。サイズも小さく最近の流行りっぽいです。
鍵はまるで自動車のような格納式。
シートはタンデムシートと一体なものの、段がついたもの。マイナー前はフラット形状だったのでポジションに自由度があったものの滑りやすく、走っていると後ろにずれていたなんてこともあったので、今回からはずれにくいシートとなりました。
シートを外すとバッテリー、ちょっとした小物をいれられるスペースがその前にあります。
シート裏に書類等が収まり、とても整理整頓されています。
スポーティな操作系。
リアモノショック。
フロントは倒立式フォークを採用。
クラスを超えた存在感
グロムの特徴は、そのデザインとサイズ。
700ccのヤマハMT-07と並べてみても、まったくデザイン的には負けていません。むしろまるで異母兄弟かと思うほどテイストが似ていますね。
実際のサイズはこれほど違うのに遠目ではそれを感じさせません。
このクラスを超えた存在感がグロムの人気の秘密でしょう。値段が高い安い、排気量が大きい小さいを問わない「持つ喜び」がこのグロムにあります。
まるで自転車
サイズが小さく、自転車置き場においてもご覧のとおり、普通の自転車とほぼ同等。むしろ全長は小径タイヤのおかげで短いほど。車両重量も100kg前後と軽いため、取り回しもまったく苦になりません。
買い物やちょっとしたお出かけでは、自転車のように使えます。
都内移動
都内の移動で125ccはある意味無敵。私はやりませんが、スタートダッシュやすり抜けで125ccクラスのスクーターが水を得た魚のように走る姿を見かけます。そこまでしなくとも、軽自動車やミニバンと同等の加速ができる125ccクラスは交通の流れにのって走ることができ、周りに気を使うことなく移動可能。都内の移動は得意とするところでしょう。
下道とことこツーリングで高燃費
さてツーリングはどうでしょうか。2年前に同じく125ccの排気量をもつトリシティで行った奥多摩へと行ってみました。
#トリシティ でリターンライダー(4)奥多摩周遊道路プチツーリング【ワンダードライビング】
結論からいうと、ある意味最強のツーリングマシン。高速道路に乗れないことでその移動範囲はせばまりそうですが、山道や田舎道であればどちらにしても下道ですし、むしろゆっくり走ることでより発見があります。
走行性能は軽自動車、ミニバンと同等以上なのでこれまた苦労しません。
上り坂ではさすがに4速ギアは巡航ギアなので厳しく3速、または2速に落とす必要がでてきますけど、粘り強い4ストロークエンジンは回転数をワイドに使え、不足を感じません。
そして驚くのがその燃費。200kmを走って約3.5Lほどしか使わず、ざっと58km/Lという高燃費を記録。ロガーをみると最高速度は60km/hくらい、平均速度は30km/hくらいでした。
この燃費は本当に魅力的で、ますます遠距離にいきたくなります。実際、クロスカブで北海道や九州を一周する人もいますけど、この経済性を考えたら納得です。
気になること
・足りないギア
ギアは4段と必要最小限。
1速は低いかと思いきや意外とハイギアードで、低速トルクがあるといわれている4ストロークエンジンでも発進のクラッチ操作は気を使います。
山道の上り坂ヘアピンでは2速、1速を使うことも多く、もう1段ギアがあったらなあ、と思うことも。
4速は巡航ギアで、適正な速度は60km/h前後でしょうか。それもあってあまり速度を出す意欲は湧きませんでした。
・ドラマのないエンジン
単気筒エンジンはレッドゾーンが8200回転から。
スペックをみると
最高出力(kW[PS]/rpm) 7.2[9.8]/7,000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 11[1.1]/5,250
とのことなので、5000回転を中心に使用、7000回転をこえたあたりでシフトアップするのが良さそう。ロングなギア比のおかげもあり、シュンシュンと回るというよりも、まったりとした加速感。
7000回転を超えると苦しそうになり、盛り上がりに欠けます。
ということでデザインはかっこいいので誤解しますけど、やはり実用エンジンといっていいでしょう。
欲張りは禁物
もう少しパワーがあったら、高速道路に乗れたらいいな、なんてことを考えてしまいます。実際巷で出ているキットを利用し、排気量アップして自動二輪登録をすれば高速道路を走ることができるでしょう。
ただそれには費用がかかってしまうこと、短いホイールベースで直進安定性がよくないこと、ギアが4速で足りないことなどから、本当に100km/hで快適に巡航できるかというと疑問が残ります。
特にグロムが345,600円、250ccクラスが40万円台、カワサキのZ250SLは乗り出し35万円と言われるほど低価格なので、そうなれば250ccクラスでいいじゃない、ということになってしまいます。
Z250SL | 株式会社カワサキモータースジャパン 437,400円
CB250F | Honda 464,400円
125ccは125ccの良さがあるわけですから、贅沢は敵、欲張りません勝つまでは、の精神でトコトコマイペースで走るのがよさそう。
あくまでも原動機付き自転車の領分を忘れず、楽しむのがよさそうな125ccクラスの代表格、グロムでした。