公道を走るフォーミュラ。 アルファロメオ4C スパイダー 試乗レポート
2016.05.23アルファロメオ4C スパイダー プチ試乗レポート
以前アルファロメオ4Cのクーペ、右ハンドルを少しだけ試乗しましたが、今回は左ハンドルのスパイダー。オーナー曰く、ずいぶんと洗練されたとのことですが、実際にはどうだったのでしょうか?
・クーペ試乗レポートはこちら NVHはご馳走。アルファロメオ4C プチ試乗レポート【ワンダードライビング】
試乗直後のメモを中心にお届けします。
ハンドリングはクイックでシャープ
【ハンドリング】
・ハンドルはDカットシェイプ
・ほとんどハンドルを切らなくて曲がっていける
・90度も切らない
・重ステは走りだしたら気にならない
・駐車時には重くてがっくりする
・重ステだからステアリングインフォメーションがメチャクチャ豊かかというと、そうでもないフツー
・とはいえ、左右の手応え感だけではなく、ショックが上下に動くと、一緒にハンドルも上下にシェイクされるのがダイレクトで新鮮
・前荷重が少ないため、ターンインで迷う。ちょいブレーキで前荷重したくなるフィール
4Cの特徴的なのは、この時代にもかかわらずパワーステアリングのない、重ステだという点。
私もKP61スターレット以来となる重ステに悪戦苦闘、確かに昔はこんな感じだったよなと思いつつも、いくらカーボンボディで軽量とはいえ幅広ハイグリップタイヤにクイックなハンドリングを実現する低いステアリングギア比から、車庫入れは相当苦戦します。しかもDカットシェイプ。
走り出すと重さは逆に気にならず、昨今の通常のモーターアシストのあるパワステと同じくらいで軽快。ハンドルをほとんど切らずに曲がっていけるのは、自動車とは思えません。レーシングカートかフォーミュラを指向しているのは明らかで、それは実際に実現できています。
乗り心地
【乗り心地】
・乗り心地は硬質というよりも、とにかく固い
・ショックが硬いだけではなく、ボディも硬い
・シートは薄く、ホールド性が高いわけではなさそう
・ストロークはほとんどせず、ロールしない
硬いんですけど乗り心地が悪いということもなく、ストロークが少ないという印象。これまたレーシングカートやフォーミュラに近いフィーリングでしょうか、フォーミュラは乗ったことありませんが。
エンジン・ミッション
【エンジン・ミッション】
・1.8Lターボとは思えないほどパワフル
・全域でトルクバンド
・DCTがすばやく、しかも無造作にシフトアップ、ダウンをするので獰猛
・AUTOモードでアクセルを踏み込めばいつでもどこでも即座に加速
・一瞬でレッドゾーンへ飛び込み、自動でシフトアップしていく
・排気音がばかでかく、アクセルオフでブロロロロ、近所迷惑
・上品さのかけらもない
・DNAモード切り替えでDは本当にヒドイ
・Nでもアクセルレスポンスと加速感が凄い
まあ、とにかく一番ヒドイ(褒め言葉)のがこのエンジン・ミッションのセッティング。獰猛、粗野そのもの、一説には排ガスくさいという話もあり、本当に騒音にエミッションをクリアしているのか疑わしいほど。
非日常を演出する、もっともダイレクトなものです。
ブレーキ
【ブレーキ】
・ペダルはオルガン式(アクセルと同じ)
・右へオフセットしているので、左足ブレーキを使うと相当身体が右に斜めになる
・そして踵がずれやすく、足首ではなく足のストロークで操作
・タッチは堅く、ストロークは短い
・効きが凄く敏感なので、街中でのブレーキ調整は気を使う。すぐにカックンブレーキになる。
・信号待ちでブレーキを踏んでいるとたまに奥に吸い込まれることがある
ブレーキは硬質で、効きは強力。あの獰猛なエンジンと加速力に対応するのに相応しいといっていいでしょう。
オープンカーとしての機能性
リアトランクに収納可能なルーフ。
閉めるには一旦屋根におく。
センターの2箇所のダイアルを回してロック。
前後にロックがついているので、かちんと留める。
逆側も留める。
【ルーフ】
・ルーフの開閉方式はロータス・エリーゼ、S660と同じロール式
・あけると窓を閉めていても風が入り放題
・窓をあけると、足元までビュービュー、足の裾から風が入るくらいヒドイ
・窓を閉めていても5月の夜でも寒くて、暖房をつけたほど
・オープンカーとしては0点。なんで屋根切っちゃったの?
・ロータスやS660のオーナーがなぜオープンにしないのか、理由がよくわかった。寒いし快適性がないし、開閉が面倒すぎる。
とにかく閉口したのが風のマナーの悪さ。ビュービュー、ゴーゴーで正直60km/hでも寒いくらい。
高速道路をオープンで走ろうなんて考えたくないくらいの出来栄えで、そりゃクーペが基本とはいえきつい、開ける必要ないなら閉めて走りたいと思うほど。
インテリア
【インテリア】
・カーボンフレームむき出しがそそる
・メーターが液晶で、デザインがかっこいい
・スイッチ類も独特の形状でかっこいい
・しかしエアコンのダイアルがプラスチックでチープ、かつ操作感も安っぽい上、4段階でしか調整できないおおざっぱさ。
・ディーラーの人いわく、カーボンフレームにお金かかっているけど、他は安いクルマですから、とのこと。
・シフトはアルファロメオ特有のボタン式。
・A/M切り替えをしようとして押し間違えてRを押してしまったり(走行中はエラーになる)と、ボタンの形状や位置は工夫が欲しい
・とにかく右後ろが見えない。車線変更はカンか、もしくは後続よりも速く走行して合流するしかない。とはいえクーペよりもマシ。
総合
【総合】
・排気量、パワーのスペックは大したことないが、カーボンフレーム採用による軽量化でパワー以上の加速感、軽快な動きを実現。スポーツカーとはレーシングカーたるべきという、ひとつの理想形。
・一方でイタリアならではの粗雑さ、乱暴さを兼ね備えている。洗練とは対極。上品とはとてもいえない。
・デザインもオロチを彷彿とさせるアクの強さ
サイズはコンパクトで、車両重量も軽い、そこそこのエンジンでもそのセッティングでレスポンスは最高、加速も速い、乗り心地は固く、ダイレクトなハンドリング。公道を走れるレーシングカーとして貴重な存在です。
そうか、フォーミュラはオープントップだからルーフは開いた方がいいのか、ようやく理解できました。
エンジンをかけるだけで非日常の世界が広がるという意味で、ものすごくいい車です。が、日常はちょっとtoo muchかもしれませんね。