ミシュランタイヤ・テストドライブ(2):ロールは正義! メガーヌRS TROPHY Ver.SiFo 300ch編
2012.05.08(1)のつづき。
今回はミシュラン・パイロットスーパースポーツ装着の新メガーヌRS TROPHY Ver.SiFo 300chの試乗インプレッションです。
▼MEGANE RS TROPHY Ver.SiFo 300ch 製作開始します。 - SiFoこのFF最速と謳われる Megane RS Trophyを4台入荷、より軽量に、そしてハンドリングと空力特性を向上させることを目的に「Ver.SiFo 300ch」の製作を開始しました。
Megane RS Trophyの19インチタイヤホイールはニュルブルクリンクのような中高速サーキット用にセッティングされているため、日本の市街地、ワインディング、高速道路に最適なタイヤを検討。CAR GRAPHIC 611号にて先行テストを行った Michelin pilot Super Suportが、MEGANE RSにベストマッチであることを確認しました。
この Michelin Pilot Super Sportに SiFoオリジナル鍛造18インチ軽量ホイールを組み合わせ、1輪当たり4.4kg(4輪で17.6kg)ものバネ下重量の軽減を実現、更なるグリップバランスの最適化を追求します。
またリアには、SiFoオリジナルカーボンディフューザーを装着。空力TESTを重ねながら、更にリアスポイラーガーニーフラップ、フロントアンダートレイの開発を予定しています。
また、エンジンは300馬力を目標にライトチューンを行う予定です。
エクステリア的に目をひくのが、ルーフに取り付けられたエアスクープ。まるでラリーカーのような雰囲気。
このエアスクープはもちろん機能、室内にフレッシュエアを導入します。材質はドライカーボン、エアダクトの風向も調整できます。
そしてさりげなくリアスポイラーの縁、ボルテックスジェネレーター、ドアサイドモールもブラックアウト。わかる人にしか分からない、SiFoさんならではのこだわり。リアアンダースポイラーはSiFoオリジナルのカーボンリアデュフューザーに交換されています。
タイヤを支えるホイールはSiFoオリジナル18インチ鍛造アルミホイール。
マットガンメタルがいぶし銀です。
この新メガーヌRS TROPHYは先代メガーヌR26.Rの持つ記録を塗り替え、FFでのニュルブルクリンク最速ラップを記録したクルマとして記憶に新しいです。
▼ルノー試乗第2弾は! ニュルブルクリンクFF最速のメガーヌR26.R #renault_jp ([の] のまのしわざ)
▼マイナス9秒ロマン! 新型メガーヌR.S. Trophy がニュルFF新記録を達成 ([の] のまのしわざ)
▼フェラーリより速い!? 新型メガーヌ R.S. トロフィーがニュルブルクリンク 8分08秒を記録した車載映像 ([の] のまのしわざ)比較すればよくわかるのですが、R26.R.の方が軽快、ハンドルの舵角も少ないです。ここは軽量化の恩恵が強いのでしょう。新型 R.S. Trophyはやはりフロントが重い感じです。
ベースとなる市販車メガーヌが大きく重く、高くなっているためそれをチューンするRS(Renault Sport)としてはどうしてもベース車の基本性能に左右されてしまいます。特に車両重量が100kgも重くなり、大きくなったボディでは通常運動性能がスポイルされるのが自然の成り行きです。
ですから新メガーヌ RS TROPHYのFF最速タイムはパワーアップしたエンジンと19インチタイヤのグリップで無理やり叩き出したものかと危惧していました。
ところが実際に乗ってみるとこれが実にまろやか。なんという安定感でしょうか。
見ての通り腰高で重さを感じますし、そもそもの着座位置が乗用車ベースということもありポルシェGT3 RSやS2000と比べても高く悪くいえば「トラック」的な位置で、目線も高いです。ところがひとたびコーナーに飛び込めば懐の深いリニアなハンドリグングに脱帽。
あのルノー・ベストハンドリング車「カングーエクスプレス・コンパクト」と同じ、サスペンションストロークを活かしたコーナリングを披露するのです。
ハンドリングの市民革命! ルノー・カングー・エクスプレス・コンパクトは切れば曲がる魔法のクルマ #renault_jp ([の] のまのしわざ)●ハンドル入れる、頭が入り、曲がる。
これは大抵のクルマがそうです。しかしここからが問題。
●さらにハンドルを切る、曲がっていかない。
そう、これがアンダーステアと呼ばれるもの。切っても曲がらない、曲がらないからアクセルを踏めない。またはコーナー手前でスピードを落とすようになります。
ところがこのカングーは違います。
●さらにハンドルを切る、さらにロールする、さらに曲がる。
●もっとハンドルを切りこむと、もっとロールする、もっと曲がる。
えええーーーー、なにこれ!
先代メガーヌR26.Rと比較して明らかにロールは大き目。しかしそれがデメリットではなく、重くなった車量と高くなった重心をロールで利用して接地圧とトラクションに変えているんですね。
ロールは正義!
まさに目からウロコです。
スポーツカーといえば軽量・低重心でなければならない、という固定観念にとらわれてしまって肝心のことを忘れていました。もちろんそれが可能であればそれに越したことはありません。しかし市販車をベースに作ることを考えると専用の車体を作ることもできないので実現は難しいし、実現できたとしても値段が高くなってしまいます。ならば軽量・低重心にこだわらず、逆に重量・高重心を利用するというのもまた真なり。
ルノー、そしてルノースポールがもつクルマの曲がらせ方はつまり1つじゃないってこと。それだけ引き出しが多いということですね。
そんなわけでロールは大きいものの、どこまでいってもハンドルの操作に応えて車体が動き曲がるコーナリングに二度びっくりです。コーナーの飛び込みは速い上、コーナリングスピードも高く、そしてピックアップのいい低回転ターボのおかげでコーナーの脱出スピードも高い。ぐいぐいと前で引っ張り出してくれるのが、まさにハイパワーFFの醍醐味。
もちろんこれを実現しているのは熟成が進んだダブルアクシスストラットシステム(DASS)の恩恵であることは言うまでもありません。
▼ルノー・メガーヌRSの走りを支えるDASS! フロントサスペンション形式いろいろ #renault_jp ([の] のまのしわざ)
舵角を与えても路面に対してナナメになることなく縦に押し付けるダブルアクシスストラットシステムのおかげで、荷重が効率よくミシュランタイヤ・パイロットスーパースポーツに伝わります。
そしてこのパイロットスポーツのいい塩梅のしなやかさが継ぎ接ぎだらけ、荒れた路面であっても大福もちのようにペタンと路面を掴んで、前へ前へとクルマを推し進めてくれます。これは素敵。
例えばS2000ワンドラSPLは車高ダウン、スプリングレートをノーマルよりアップしているのですが、同じ道路、路面を走るとサスストロークを使いきってしまう領域があります。そうなるとあとはタイヤ任せなのですが、そんな場面でもメガーヌRS TROPHY Ver.SiFo 300chはサスストロークに余裕があり、タイヤの性能をうまく引き出している印象でした。
ロールは多めで、実際車両重量もあるのでS字の切り返しでは不利な場面もあるのでしょうが、そういったタイトな峠道は多くないのでさほど気になりません。それよりも日本のワインディングに多い、回り込んでいくコーナーに飛び込んでいける安心感、ロールを伴いながら駆け抜けていく爽快感がいいですね。
さらにこれがウェット路面であっても同じというのですから、これまた感心です。
フロントタイヤのグリップだけに頼ったコーナリングでは、路面状況が悪くなった瞬間、いつフロントが外に飛び出るか冷や冷やするものですが、このメガーヌはリアタイヤもきちんと使ってコーナリングしているので、コーナリングバランスがドライでもウェットでも変わらないのです。
グリップが少なくなっても同じように走れる、というのはこれまたドライバーにとって安心かつ無用な緊張感が強いられないのでとても嬉しいですね。ミシュラン・パイロットスーパースポーツの方向性ととてもマッチしています。
ということで高速道路からワインディング、荒れた路面、ドライからウェットまですべての領域を試しましたがもう、なんというか、このバランスとこのパフォーマンスでこの値段ですか、という驚きを通り越して呆れてしまうほど。ルノースポールの実力に改めて脱力です。
それでいて定員5名、175cmを超える大人が後席にのっても不満がでないほどの室内空間を確保、トランクスペースもたっぷりあってスーパーに買い物もいけるし、最低地上高が高いから道を選ばないし、普段使いにも最適。まさに別の意味で「スーパーカー」でした。
唯一左ハンドルマニュアルのみ、というのが惜しい。右ハンドルオートマがあれば、ファミリーカーとしても十分使えるのに、と思いつつもそんな需要は日本ではほとんどないので、逆に男らしいラインナップでいいかもしれません。選ばれたユーザーだけがこの異次元のハンドリングを堪能できるだなんて、羨ましいですね。
次回はいよいよ地上を走る戦闘機、ポルシェGT3 RSのテストドライブです。
(つづく)
【追記】
メガーヌRS TROPHY Ver.SiFo 300chにはスポーツスイッチがついており、それをONにするとさらにパワーとレスポンスが向上するのですが、今回はOFFのままでの走行でした。