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ヤマハFZ250 PHAZER(フェーザー)1985年式 レストア記

ミシュランタイヤ・テストドライブ(1):ドライバーの能力を引き出すパイロットスーパースポーツ編

2012.05.07

色も違えば、駆動方式も違う3台です。

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ところが唯一同じところが。じつはこの3台、すべてルマン24時間耐久レースからのフィードバックを受けたミシュラン最高峰タイヤ、パイロットスーパースポーツ装着なのです。

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ミシュランタイヤ - Pilot Super Sport - PassengerCar - www.michelin.co.jp

まず、テスト車両とタイヤサイズの紹介です。

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[ポルシェ 911 GT3 RS (997)]

F 235/35ZR19 (91Y)
R 305/30ZR19 (102Y)
BBS 鍛造マグネシウムホイール
車両重量 約1300kg
前後重量配分 約40:60

(車両提供:SiFo.jp

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[ルノー MEGANE RS TROPHY Ver.SiFo 300ch

F 235/40ZR18 (95Y)
R 235/40ZR18 (95Y)
SiFoオリジナル鍛造アルミホイール
車両重量 約1380kg
前後重量配分 約60:40

(車両提供:SiFo.jp

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ホンダ S2000 ワンドラSPL

F 215/45ZR17 (91Y)
R 245/40ZR17 (95Y)
ホイール RAYS CE28N
車両重量 約1250kg
前後重量配分 50:50

(車両提供:wonder driving

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タイヤサイズ、駆動方式、重量及び重量配分がまったく異なる3台を同じ道路で乗り比べることで、タイヤの特性、そしてクルマの特性が明確に見えてきました。今回はタイヤについてレポートします。

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(245/40ZR17、左側がOUTSIDE、右側INSIDE)

タイヤのトレッドは大小異なるストレート溝と無数の切れ込みがそれぞれ不均等に入っています。切れ込みは入れるもののブロック自体はつなげることでブロック剛性を出しているのでしょう。またサイズが不均等なのはタイヤノイズの周波数を別にすることで静粛性をあげるためのもの。外側と内側でパターンが異なるのはそれぞれ役割が違い、外側はドライグリップ、内側はウェットグリップにフォーカスしてデザインされています。

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(215/45ZR17)

特に驚いたのが、215サイズのタイヤの溝。非常に幅広でなんと小指がスッポリと収まるほど。これほど溝が広いのは人生初めてかもしれません。溝が広いということは、実際の接地面は狭くなる、ということでころがり抵抗低減に寄与、燃費向上にもつながります。

もちろんこの幅広グルーブのおかげでウェット時の排水性はバッチリ確保。

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245サイズの方では小指が収まるほど太くありませんでしたが、そこそこの太さです。

タイヤのゴム、ブロックを押した感じは新品ということもあり、柔らかい印象。

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特に面白いのが無数に生えたヒゲ。まるで無精ひげのようにあっちこっちにピンピンとたっていて、なぜ、と思ったのですがこれは型にゴムを流し込んで成型した跡。空気を抜く管にゴムが浸透していった残りだそうです。このヒゲを引っ張ってみるとまるでゴムひものようにピヨーンと伸び、この柔らかさであればグリップに期待ができます。

最初街中で走ってみると、特にこう、という強烈な印象はなく、違和感も個性も感じません。ところがワインディングにさしかかり、走ってみるとこれが実にいい塩梅。グリップが強烈なわけでもなく、かといってグリップしないわけでもないという、尖ったところがないという印象。ハンドルを切っていくと切っただけタイヤもそれに合わせてしなやかにつぶれていき、曲がっていきます。コーナリングは角ばっておらず、踏ん張ったけど、もうダメーーって路面を手放しちゃうような唐突さも、挙動不審さもありません。マイルドといえばマイルド、一方強烈なドライグリップを求める人には物足りないかもしれません。

縦方向も同じ傾向、ハードブレーキングするともうそろそろロックするよという、怪しさをブレーキペダルとスキール音の両方で知らせてくれます。加速方向のグリップはというと、2000cc自然吸気程度のトルクなら十分。ポルシェGT3 RSの試乗の際も、試乗するレベルの回転数では限界に達しませんでした。

特にいいと思ったのは路面の悪い場所、つぎはぎだらけの舗装やひび割れ、カントが変わってしまうようないわゆる3桁国道の田舎道。タイヤがしなやかにいなす感じで、路面変化に対して急激なグリップ変化がないんです。

例えていうならば、大福もちが路面にペタペタとついている感じ。Sタイヤがつきたて餅だとすると、粘着力で路面にくっつくのに対し、大福もちは粉で表面はドライ、しかし路面の凹凸に合わせて形が変化することで路面をつかむようなイメージです。なので路面が悪い場所でも平滑な場所でも唐突なグリップ変化がありません。

このしなやかさのおかげで、限界領域に達するまでのタイヤの状況が分かりやすく、安心して運転できるのです。

そしてこの安心感はドライだけではありません。

雨の降り始めの峠道、そしてヘビーレインの高速道路。どちらも同じく急激なグリップ変化がなく、それまで通りに走れるのです。これはスゴイ、驚いた!

なにせウェットといえば大の苦手。グリップに助けられて走るタイプのヘタレドライバーなので、グリップが変化する、落ちるのが怖くて仕方ないのです。ところがこのタイヤ、路面が多少濡れようが、水がたまっていようが路面にちゃんとコンタクトしているんですね。だから緊張感を強いられることなく運転ができるんです。これはロングランして天候変化があっても疲れずに目的地にたどり着くことができますし、実際にタイヤテストした帰り道、中央高速が大雨になってもこれまで感じたことのない安心感をもって走ることができました。

名前はスーパースポーツとついてますけど、もしかしたら山坂道、高速を含む通勤に使うのに向いたタイヤなのかもしれません。

名前から受ける印象ではグリップが高く、サーキットで走ってタイムが出そうでもありますが、私の個人的な印象ではタイムはでない感じがします。なによりサーキットでタイムを出すのであれば、それ用のSタイヤがあり、Sタイヤはそれこそ国産タイヤでいいのが一杯でているのでわざわざ輸入タイヤのラジアルを使う必要はありません。

それにサーキット、パーマネントコースはコーナーも路面も決まっており、そこをどう駆け抜けるかでタイムが決まってきます。だからタイヤとしては、もっともっと尖っていいでしょう。しかしこのパイロットスーパースポーツはルマン24時間耐久レースからのフィードバックを元に作られたタイヤ。どちらかというと、クルマ・タイヤの性能で1発のタイムを狙うのではなく、24時間いかに疲労が少なく、安定してラップタイムを刻めるかという、ドライバーの性能を引き出すか、といったところが主眼におかれている印象。

そうであれば、路面変化や天候変化に耐え、疲労が少ないのもうなずけます。それに加えて限界領域に行くまでの過渡特性がとてもドライバーに伝わってくるため、クルマとの対話がしやすいですね。

運転手「どう、どう?」

タイヤ「まだまだ」

運「そろそろ?」

タ「そろそろ」

運「ダメでしょ」

タ「うんダメ」

運「やっぱりね~」

みたいな感じでドライバビリティ、コントロール性が高いです。これはタイヤの性能が高い、というよりも、ドライバーの能力を引き出す性能が高い、といった方が的確かと。

クルマを走らせるのはドライバー、だからドライバーの能力を引き出そうという方向。ドライバーにとっては感覚を研ぎ澄ませば色々伝わってクルマとの対話ができるので運転が楽しくなるし、運転が上手になりそうな予感です。

つづく


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