そつけん!! やっぱりバイクが好きだった(13) #バイク女子
2016.08.31ヤマハ発動機主催「初めてでも安心! 超初心者向けバイク講習会」でバイクの楽しさに触れた筆者は、普通二輪免許取得を目指し、コヤマドライビングスクール二子玉川校に入校。
意気揚々と教習に臨むも、初回からエンストや転倒を繰り返して身体は痣だらけ、おまけにミラーやブレーキレバー、クラッチペダルを破壊し、駐車中の教習車に傷をつけたりと、筆者も教習所も涙目に。
はたして筆者は無事に卒検をクリアすることができるのか?
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卒検の日
とうとう8月19日のバイクの日、筆者の卒検の日がやってきました。コヤマドライビングスクール二子玉川校で卒検は毎日実施されており、通常は昼休みの時間帯となる13時30分からの時間を利用してコース走行の試験がとり行われます。
集合は12時50分。指定された部屋には、白髪の男性がひとり。挨拶をするなり
「何回目? 今日初めてなの? 僕は2回目なんだよね。昨日受けたんだけど、平均台落ちちゃってね」
と、トークがはじまってしまい、なかなかお話が途切れない。
わー。どうしよう。コースの復習したいんだけど......。
「昨日は大学生と一緒で、彼女はもう新しいバイクを親に買ってもらったんだって。もう買った? え? まだ? あなたも大学生でしょ?」
なんて言われたもので、30代の筆者は有頂天に。えへ。えへへ。
とはいえ、やっぱりコースの復習をしないと不安です。「お話するのは楽しいけど、そろそろ切り上げたいなあ」と思っているところで、ほかの方々も入室。結局、教習生同士、話に花が咲いて復習どころではありませんでした。
そうこうするうちに、卒検を担当されるインストラクターの先生、つまり試験官がやってきて、卒検についての説明をしてくださいました。なんと、卒検では教習用バイクCB400SFの「5000回転以上でエンスト」する装置がオフになるそう。
それから、当日のタイムテーブルと、検定項目の詳細の説明がありました。検定は基本的には減点方式。しかし、平均台で落ちたり、スラロームやクランクのパイロンに触れたら、その場で失格......。これから検定を受ける身としては、考えたくない話です。
しかし、「緊張しなくていいですよ。僕は、みなさんを受からせるためにいるんです」とのことで、試験官の先生から、アドバイスもいただきました。
- エンストは全然たいしたことじゃない。だから、エンストは気にしなくていい
- 平均台もスラロームも、とにかく通過できればOK。タイムは気にしない
- 急制動は40km/hの速度を出して維持。パイロン手前でアクセルを戻し、パイロンを前輪が通過すると同時にブレーキをかけるように
- 右折した後、すぐに右折する場所では、なるべくセンターライン沿いを走り、大きく膨らんで右折をしないように
- 停車時は、ポールの前後30cm以内であればOK
等々、卒検コースで気をつけるべき点を改めて復習することができました。
そして、懸案だったコースは......先日逆走してしまったBコース! Aコースに比べて、左折左折で小さく回る場所が多く、ウインカーの付けもどしの忙しいコースでもあり、難易度が高く感じるコースです。
その後、プロテクターとヘルメットを装着して、検定に向かいます。更衣室でも、もうひとりの女性と「Bコースはハズレだよね」という話をしてもりあがりました。それから、最近、女子更衣室で会う女性の数が、めっきり減ったことも話題に。
それまでは、更衣室で2,3人ほどの女性と会ったものですが、この一週間ほど、女性の人数が減り、ひとりも女性に合わない日もありました。「大学生なんかは、夏休みに入ってすぐに入校して、もう卒業しちゃったのかしら?」なんて話をしていたときに、「学生でしょ?」との質問が!
ひゃっほー! 本日2度目の有頂天です。お母さん、童顔に産んでくれてありがとう!
上機嫌になりながらも、本連載のための写真が足りないことを思い出し、バイクを撮影しに行ったりしているうちに、検定の時間がきていました。
いよいよ、検定!
この日の卒検受験者は、筆者を含めて4名。筆者は2番目に走ることになりました。ひとりずつBコースを走り、その後方に試験官の先生がぴったりとくっついて、チェックしていくという方式です。
1人目は長身の24歳の青年。われわれが見守る中で、落ち着いて難なくコースを走破して帰ってきました。残りの3人で「おつかれさまー!」と、拍手で出迎えます。ちょっと不思議な連帯感が生まれました。
そして、いよいよ筆者の順番がまわってきました。戻ってくる青年とのすれ違いざま、「あやからせて!」と言って彼を拝み、検定用バイクの前へ。『ばくおん!!』の教習車、バイ太と同じスーフォア。でも、初日からエンストを起こして、倒れたり挟まったりと、散々な体験をした筆者にとって、大きくて重くて扱いにくいバイクでした。
でも、これでお別れかと思うと、やっぱりちょっと寂しい。とはいえ、できることなら、これで終わりにしたい! だって、バイクの日に卒業したいんだもの。そのために、検定の日を8月19日に決めたのです。
検定コースを走行
フロントブレーキとクラッチを握りながら、バイクを立て、スタンドを戻す。後方確認をして、車体にまたがる。キーを回して......そうだ。ミラーの調節、忘れてた!
慌ててミラーを調節して、エンジンをオンに。右ウインカーを出して、ギアを1速に。再度後方確認をして、アクセルをゆっくり開けながら、半クラッチ。
走り出しは上々。視界の悪い生け垣の間から、右側を注意深く確認して左折。すぐに2速に上げて、クランク、S字をクリア。出口を右折、なのに左ウインカーのままだった!
慌ててウインカーを右に変えたところで、「ビッ」っとクラクションが鳴ってしまう。プピ芋だ。
ギアを1速に戻し、坂道を上りさして停止。ここから坂道発進。
後方確認をすると、ニコニコした先生を目が合う。たしか、クラクションも減点対象だったはず。どうしよう。そんなに大きな音ではなかったけれど、先生には聞こえただろうか?
仕方ない。気を取り直して、アクセルを開けて半クラッチ。タイヤの動く気配がまったくない。でもこれ以上クラッチを開けるとエンストしそう。それなら、アクセルをもっと回さないと。でも緊張しているせいか、回転数が安定しない。
回し過ぎれば、空ぶかしになってしまう。これもたしか、減点対象だ。
スムーズに発進できるよう、動き出してからリアブレーキをゆっくり離したいところだけれど、これ以上時間をかけるわけにもいかない。リアブレーキを離すと、じわっと車体が前に進んで、アクセルをさらに開ける。後方確認しながら頂上で右に寄せ、坂を下る。
次は右折。しまった。その後も右折なのに、センターラインを大きく超えて、左に寄せちゃった! 慌てて右に寄せる。あ。後方確認も忘れた!
そのまま右折して、2速3速とスピードを上げ、直線を40km/hで走行、カーブ手前でポンピングブレーキで減速。ほかの3人が自分を観ているのを感じながら、コースをぐるっと回って、今度は昨日逆走した踏切の入口。
今度は逆走することなく左折し、右ウインカーに切り替え、踏切前で一時停止。後方と左右を確認して、1速のまま通過。突き当りで右折、左ウインカーで障害物を避けたところでウインカーを戻す。この先には急制動がある。
車道を外れて、急制動のコースへ進入。停止した状態から走り始めるいつもと異なり、今回は2速からぐんと加速して、すぐに3速へ。そのまま40km/hをキープして......と、メーターを見ると50km/hに。
とはいえ、40km/h以下に減速してしまうのはマズイ。と、おそるおそるスロットルを戻しているうちに、ブレーキ位置に。アクセルを戻すと同時、リアとフロントブレーキをかけて、停止。
11mラインの手前。エンストもせずにしっかり停止できて、ほっと一息。試験官の顔色と後方を確認して、車道へ戻る。そのままコース外周を大きく回って、平均台・スラロームへ。
平均台の前で一時停止。ああ。発進でスピードが出なかったらどうしよう。平均台に乗れなかったら、落ちたらどうしよう。不安に押しつぶされそうになりながら、クラッチを少しずつ離して、なんとか平均台に乗った。
途中、少しリアブレーキをかけてタイムを稼ごうと試みるも、「昨日、平均台で落ちちゃって......」という男性の言葉を思い出し、ブレーキを開放してさくっと通過。スラロームもアクセルを使わず、ニーグリップとライン取りだけを意識して通過。
終わった! 残るは、停車のみ。
左ウインカーを出して、停車の合図。しかし、「ブーッ!」っとクラクションを大きく鳴らしてしまい、またもプピ芋。さすがにこれは、先生に聞こえたに違いない。
がっかりしながら、前輪をポールの横につけて、停止。ウインカーを消してギアをニュートラルに。エンジンを切って、後方確認。フロントブレーキを握りながら降車。
先生の「おつかれさまでした」の声で、筆者の卒検は終わったのでした。
待機場所になっていた校舎の入口に戻ると、ほかの3人が拍手で迎えてくれて、やっと肩の力が抜けた感じがしました。その後もみんなで応援しあって、4人の卒業検定が終了しました。
どきどきの結果発表
自動車の卒検受験者と一緒に、検定待合室で待つこと30分ほど。検定発表室からマイクで名前を呼ばて、ひとりひとり講評を受けます。
さて、結果は......。
全員合格! 先生からは、「4人のチームワークがすごかったですね」というコメント付きでした。
検定コースの走行で注意されたのは、後方確認を忘れたところ。減点かもしれない、と思った50km/h超えの急制動は「よく止まりましたね」と褒められて、三度(みたび)有頂天です。
教習中、あれだけ苦労したにもかかわらず、「急制動、得意なんです」なんて答えて帰ってきました。
後日譚
合格証明書をいただき、「二子玉に来るのはこれで最後か......」なんて思いながら、校舎を撮影して帰宅したところ、ポケットにロッカーの鍵が......。 後日、返却しに行きました。
対応してくださったのは、乗車初日の2時間目に担当してくださった、女性インストラクター。「アクセル戻して、ブレーキかけてー、クラッチ切って、ガシャガシャガシャー」と繰り返し教えてくれた先生でした。
最後の最後まで、コヤマドライビングスクール二子玉川校に迷惑をかけてしまった筆者なのでした。
やっぱりバイクが......
教習中、たくさんの方に応援していただいたおかげで、無事に卒検をクリアできました。7月の23日にはじめてバイクに乗る楽しさを知ってから約1ヶ月。長いようであっという間の時間でした。
そういうわけで、筆者が二輪免許取得を目指したこの連載はおしまいです。
身長158cm、体脂肪率25%のぽっちゃり体型。自分が考えるよりも運動神経はよくないし、リズム感もない。教習中エンストや転倒を繰り返した筆者でも、免許を取ることができました。これから普通二輪免許をとろうと思っているひと、いま教習所に通っているひとの背中に、そっと触れることができれば......願わくば、その背中を少しでも押すことができれば女子の本懐です。
バイクって格好いいな、と思ったのは、高校生のころ、深夜に観たWGP。選手の順位やスピードにはあまり興味がなくて、ただひたすら、カーブで大胆に車体を傾けて、美しく曲がっていくバイクを眺めるのが好きでした。傾いたバイクとバイクの間にすべり込むときの緊張感、そこからすっと立ち上がって抜けていくときの、どきどきする、あの感じ。
走るバイクの美しさに感嘆しながらも、不思議だったのは、レーサーたちのこと。ものすごい速さでコースを駆け抜け、カーブでは右へ左へと車体を倒し、膝を擦るようなロードレースでは、一歩間違えれば転倒して大怪我をしそうです。
それなのに、レーサーたちは怖くないんだろうか? もしかして、楽しかったりするんだろうか? そんなことを考えながら、深夜テレビでレースを眺めていました。
あれから20年。さすがにレーサーみたいに走ることはできないけれど、でも、自分なりにバイクに乗ることは楽しくて、ドキドキしました。
いっぱい転んでいっぱい痣もつくって、ツライこともあったけれど、最後まで頑張ることができたのは、それでもバイクに乗るのが楽しかったから。
そして、わたし......
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