#名車シティ再生 (35) 3Mラップフィルム シリーズ1080で名車は再生するのか? #3mjp
2016.05.17#名車シティ再生 、最大のハイライトは24年間太陽にさらされて劣化してしまった塗装。
中古車でよくルーフのクリア層がとれ、ガビガビになったうえ色あせてしまったものを見ますが、だいたいそんな状態。前オーナーによりトップルーフのみ再塗装をしたということですが、その周辺のルーフサイド、FRPに変更されたボンネットはもちろん、プラスティックで塗装が弱いドアミラーなどその塗装の劣化は激しいです。
これを同じカラー、黒で塗装しなおすのも大変ですが、せっかくなのでリフレッシュとカラーチェンジ、柄チェンジに挑戦してみたいと、3Mさんにご相談してみました。
3Mラップフィルム 1080シリーズ
向かったのは五反田〜品川にある3M本社。ここで担当の中尾さんから商品説明を受けました。
まずフィルムにはいくつか種類があるとのことで、自動車には自動車専用のフィルム シリーズ1080があるとのこと。これはカーボン柄、マット(つや消し)、サテン、ブラッシュド(金属調)、グロス(ツヤツヤ)、グロスメタリックと種類豊富、全71色が用意されます。
3M|3M™ ラップフィルム シリーズ1080|製品・サービス|コマーシャルグラフィックス製品
自動車用だけあって屋外の炎天下、紫外線に直接さらされる厳しい環境下でも堪えられるフィルムで耐久性は3年とのこと。
3Mではダイノックと呼ばれるフィルムも出していますが、こちらは主に住居の壁などにはる平面用。そのため平面に貼りやすいよう硬くできており、一方ラップフィルム1080はドアミラーのように球体といってもいいような曲面でも対応できるよう、柔らかくできています。
趣味で携帯、パソコンにフィルムをはったりする人もいますが、3Mが出しているフィルムは看板、電車、飛行機など、どれもまったく同じフィルムではなく、用途によって商品の特徴や特性はきめ細かくチューニングされています。
「コントロールタック」「コンプライ」テクノロジー
3M|3M™ ラップフィルム シリーズ1080|製品・サービス|コマーシャルグラフィックス製品貼り付け時に位置合わせが楽にできる3M™ コントロールタック™ 粘着剤とフィルムと下地の間に巻き込んだエアを抜けやすくする3M™ コンプライ™ 粘着剤を採用しているので、広い面積や複雑な面への施工がすばやく簡単に行えます。 また、再剥離性があるのできれいに剥がせます。
3Mが得意としている技術は「のり」。いわゆるシールですが、ただくっつけばいい、というものでもないといいます。
ラッピングフィルムでは位置決めが大事となるので、位置決めが容易にできるようシールはさささっと表面上を動かせます。顕微鏡でみるとミクロのガラスビーズが接着面に配置されており、これがコロコロと動くことで初期接着を落としています。
位置が決まったら上からぎゅっと押すと、粘着剤の中にガラスビーズが押し込まれ、きちんと粘着するという仕組みです。
糊のことタックといい、「タックが強い」というのは「ベタベタ」している状態。このタックをうまくコントロールしているので、この技術を「コントロールタック」と呼びます。
剥離シートにはミクロの溝が切ってあり、糊の表面にその溝が埋め込まれます。
この溝にそって端から空気が抜けるため、よくありがちな空気がダマになって残って、後から針でブチブチ抜くといったこともありません。手やヘラでなぞるだけですっと空気が抜けるので作業性が非常に高いです。これを「コンプライ」と呼びます。
実際にやってみる
中尾さんが会議室のテーブルで3Mラップフィルム1080を使って実演してみました。
会議室のテーブルの上に乗せただけではくっつかない3Mラップフィルム。位置決めをしたあと上から押すとペタっとくっつき動きません。
このとき適当に貼り付けて空気が中に入っていても大丈夫。あとから手でなぞったら、あらふしぎ。空気が抜けてピタッとくっつくじゃありませんか。
さらに剥がすときも簡単。ペリペリとフィルムだけ綺麗に剥がすことができて、もちろん糊、粘着が残ることもありません。当然塗装も痛めないのでこれなら安心して自動車にはることができます。
ラッピングフィルムのマーケット拡大中
昔自動車の耐用年数は5〜6年と言われて、車検を機会に乗り換えるのが一般的でした。昨今は自動車の耐用年数が伸びたり、社会背景の変化により保有年数は伸びる傾向で、昨今は平均10年〜13年と言われて、長く乗るケースが増えています。
自動車メーカーでは生産効率化のためなるべくカラーは減らす方向ですが、一方ユーザーは好きな色を選びたいというニーズがあります。
ラッピングフィルムは個人のニーズとメーカーのニーズの隙間を埋めることから、ここ最近伸びているのです。
広がるラッピングフィルムの世界
さてこのラッピングフィルム、様々な場所で使われています。例えばバスや電車、飛行機。
ラッピングバスは東京都が広告として導入したことですっかり一般的になりましたが、これも3Mの技術のたまもの。
3M|3Mのグラフィックフィルムが「現美新幹線」で新幹線初!車体全体をフィルムでラッピング|ニュースリリース|会社概要
最近では黄色の銀座線や、山手線100周年記念車両、そして現美新幹線がラッピングです。え、あれ塗装じゃないの!? と思うものも多いですね。
ANA、スター・ウォーズ「BB-8」ジェット披露 28日就航
飛行機ではスターウォーズBB-8が有名。これは幅130cmのフィルムをロール状の反物にして印刷、端を少しづつ重ねて貼っているんです。3Mが印刷から施工まで担当し、自動車用とは異なる飛行機専用の素材を使っているとのこと。
というのも飛行機は地上にいるときは自動車同様数十度の熱を持ちますが、離陸後数十秒でマイナス何十度の世界になる温度変化の激しい環境にさらされます。風圧で剥げるというよりも、この温度変化による収縮が問題になり、それに対応したフィルムとなっているんです。
いずれにしても初期接着を落とす、コントロールタックが共通技術となっているそうですよ。
施工はどうするの?
3Mのラッピングフィルム素材の素晴らしさがわかりましたが、塗装だろうが、フィルムだろうが実際に大事なのは施工技術。
そのため3Mでは販売するだけではなく、施工者を養成するトレーニング、認定制度を導入・支援しています。この講習は特約店が主催、月に1回程度の割合で開催、スキルによって4段階に分かれており、1-2スターは座学が中心、3スターはバンパーやドアミラーなど複雑な形状を含む車両の一部分、4スターでフルラッピングが可能となります。
本来であれば認定を受けたプロにお願いするところですが、今回のレストア企画ではなるべくDIYでトライするのがポリシー。逆にこの講習を受けることで、私自身がプロの技を習得しようとトライすることにしました。
果たしてリフレッシュはできるのでしょうか?(つづく)