FRの苦悩と憂鬱(3)時代はFFへ
2014.08.23FRの苦悩と憂鬱(2)ドリフトとの決別【ワンダードライビング】の続き、今回が最終回。
ニュルブルクリンクで凌ぎを削るFF勢
ドリフトしないFRなんて、遅くて狭いだけ。世界のFFの進化はふと気づくと遠くの彼方に消えていたのです。その急先鋒はまたしてもフランスはルノー、メガーヌR26.R。どんだけFF好きなんだ、フランス。
ルノーF1のR26がF1優勝したのを記念して作られた限定モデルは、225馬力ながらもニュルブルクリンク北コースを8分17秒で駆け抜けました。これは280馬力のR32 GT-Rの8分20秒を越える記録です。
その後継となる現在のメガーヌR.S. Trophy は 265馬力で 8分08秒と記録を更新。
ところがこの記録をVW ゴルフGTiの兄弟車である「セアト レオン・クプラ280」が7分58秒と塗り替えます。なおマイナス21秒ロマンのR33 GT-Rは7分59秒、NSX-R(後期型)7分57秒を越える記録です。
さらにこのニュルFF最速の激戦は続きます。つい先日275馬力にパワーアップ、足回りにタイヤ、マフラーを交換したメガーヌR.S.275 Trophy Rが 7分54秒を記録。これは新型ポルシェ・ケイマンS(PDK) 7分55秒を上回ります。
この苛烈な戦いに打って出るのがホンダ・シビックR。こちらも2リッターターボ、300馬力で7分50秒を切ると噂されます。
メーカーを越えて提携が進む、これがグローバル化
このラップ争いはFF, MR, 4WD中心ということから分かるように、スポーツドライビングはトラクションが重要であるということを改めて思い知らされます。この中に入ってこられるFR車はBMW Mシリーズくらいなものでしょう。先代 E92 M3クーペが8分5秒、新型BMW M3/M4は7分50秒と言われています。
ターボやハイグリップタイヤを否定するのもいいのですが、ドリフトもラップタイムも望めないのだとすると、何を楽しんでいいのやら、86の行く末が不安と思っていたら、BMWと提携して次期86はBMWと共同開発するんだとか。
新型スカイラインがダイムラー製の4気筒ダウンサイジングターボエンジンを搭載するなどメーカーの枠組みを越えて提携が進んでいます。これはFR用の縦置きエンジンの需要が世界的に見ても少ないこと、一方でかさむ開発費、選択と集中の結果このようなグローバル化が進んでいます。
マツダとアルファロメオが新型ロードスターのシャーシで提携したというニュースもありました。こちらはどうも有耶無耶になりそうな気配もありますが、それだけFRというのは世界的にみてもマイノリティになりつつあります。
やっぱりFRが好き
これだけ不利となっているFRですが、ファンは根強いです。MR/RRにないフロント荷重による安心感のあるステアリング、アクセルに即応するリアの蹴りだし、重量バランスのよさから来るコーナリング感覚。走る曲がる止まる、そしてFFに敵わないですがMR/RRよりは荷物が積める実用性。
FFが荷物を積めばつむほどリア荷重となりトラクションが失われ、ハンドリングのバランスが崩れるのに対し、FRの場合は人や荷物を乗せると逆にトラクションが増し、バランスは崩れにくいというのもメリット。雪道では助手席ではなくわざと後部座席に座らせてトラクションを稼ぐ、という技があるほどです(イニシャルD参照)。
FRの行く末
FRは旧世代、エンジン時代のレイアウトといってもいいでしょう。本田宗一郎が指摘したように、フロントにエンジンからトランスミッションまで全部詰め込めるのであれば、プロペラシャフトなんて不要で、「運転が楽しい」とでも言わないと成立しないものとなってしまいました。
FRの未来は決して明るくはないですが、エンジンのある限り、続いて行くことでしょう。電気モーターの時代になったら分かりません、その手の類いはRRになるかも知れません、BMW i3のように。
(終)