ジェット推進とは? ワンドラ・ジェット&ジェット試乗会で運転特性の違いを体感
2013.09.03先日開催したワンドラ主催・ヤマハ発動機・マリーナ協力の「ワンドラ・水上バイク&ジェットボート体験クルーズ」。幾多ものボートを七つの海でテストしてきたテスト・ドライバーの松瀬氏に来ていただき、ジェット推進ボートの操船を教えて頂きました。
まずジェットボートの構造の違いから。
▼今までとまったく異なる構造! 霞ヶ浦でジェット推進ボートAR190を体験【1】【ワンダードライビング】エンジンに小さなインペラーをつけ、高回転で水を噴出することで推進します。最大回転数は8000回転。通常の船外機が 5000~5500回転なのでその差は歴然、小さなインペラーでキャビテーション(泡がでてきて効率が落ちること)が少ないことから高回転化ができるとのこと。その結果ボートの最高速もアップ、50mph(約80km/h)でるのです。
▼マリンジェットのメカニズム - マリン製品 | ヤマハ発動機株式会社
▼ウォータージェット推進 - Wikipedia一般的なスクリュープロペラよりも設計、製造は困難であるが、スクリュー船では到達しがたい40 - 50ノット(約74 - 93km/h)での高速航行を可能にする推進方式である。また船底部に突出部分が無く、浅水面での航行が可能であり、ノズルの噴射方向を変える事で船の向きを変えられるため舵の必要が無い。加えてノズルの逆噴射機構を用いた急制動が可能である。またスクリュープロペラでは不可能な超微速航行が可能である。
このような利点を持つ反面、低速航行時の方向安定性、操縦性に難があること、[2]エネルギー効率はスクリュープロペラに劣り、低速域での燃費が悪いなどの欠点がある。
ジェット推進は高速艇でよく使われ、自衛隊にはミサイル艇で採用されています。
▼ジェット推進ミサイル艇
▼はやぶさ型ミサイル艇 - Wikipedia主機はアメリカのゼネラル・エレクトリック社が開発し、石川島播磨重工がライセンス生産しているLM500-G07ガスタービンエンジン(出力5,400馬力)を3基搭載している。主機についても当初の予算概算要求段階では、ガスタービンは2基として検討されていたが、不審船事件後の要求速力増加に対応し変更された。各エンジンは船体に並列に並べられ、それぞれ一基のウォータージェット推進のノズルに接続されている。
ジェット推進にするメリットとしては高速航行が可能という点ですが、一方でプロペラ式のボートとは操縦特性が大きく異なります。テスト・ドライバー松瀬氏によると、船舶免許を別にしてもいいくらいの違いということで、実際水上オートバイの方は当初船舶免許で運転できたのが現在では小型特殊船舶ということで別になっています。
ジェット推進ボートは同じ2級船舶免許で運転できますが、大きく戸惑うのは低速時の舵切りの無さ。特に接岸時にはスロットルをあけないと曲がらない、当て舵が不要、といった点でチグハグになってしまうことも。
プロペラ式ボート、船外機ではハンドルはクルクルと回せて、舵がどちらに向いているか分からなくなることがあり、後ろをむいて舵の向きを確認することがありますがジェット推進の場合はそもそもハンドルが1回転ほど。まるでレーシングカーのハンドルように左右180度しか曲がらないのです。
ですから低速時の舵効きの悪さの一方、高速でハンドルを切るとスパンと曲がっていきます。さらに特徴的なのはその動きがまるでリアが滑って行くように巻き込むのです。舵という抵抗がないためともいえますし、リアからジェットを噴出しているせいで、その急激な動きは大きな横Gとなり、中の人がひっくり返ってしまうほど。ですから舵の当て方は慎重にしなければなりません。
一方で危機回避の操作、こちらは通常スロットルをオフにして減速、舵をあてるのですがさきほど指摘したように「スロットルをあけないと曲がらない」ことからそのまままっすぐいってしまいます。「あっ」と思ってハンドルで回避したい場合はスロットルを開ける、という勇気と行動が必要です。
またその船艇の低さも特徴的。船首が低く水面に近いため、波高60cmくらいが限界で、それ以上では波に突っ込んでしまいます。湖や川では波が基本ないのですが、他のモーターボートの引き波が来ることがあるので、その場合は回転数を5500回転くらいにしてノーズをアップする必要があります。この状態であれば一番ノーズが上がっており、波が60cmあってもその波にのっかっていけるためさらに+80cmくらいは上がって行けるとのこと。なお引き波にはなるべく浅い角度で進入するのも大切。
そういった運転特性の違いを自分で体験すべく、接岸練習です。
通常の船はプロペラ反力があり、それを利用するため左舷接岸が基本ですが、ジェットボートの場合は左右どちらでも同じ。ポイントとしては
・鈍角で進入すること。目安は60度以上、真横90度でも構わないくらい
・スロットルをあけながら舵を調整。TDE(スラスト・ディレクショナル・エンハンサー)を活用して舵の効きをよくするといい
・桟橋まで1艇身くらいになったら一気に舵を切る。
・当て舵(逆ハンドル)はしない。
・バック(逆噴射)をチョンチョンとかけて行き足を止める
です。慣れてしまえば当て舵しない分楽ともいえます。
松瀬氏はTDEなし、スロットルのマニュアル調整でビタビタに寄せました、流石です。
イメージ的にはドリフト駐車っぽいですね。
ワンドラ体験クルーズはヤマハ発動機、マリーナ様のご理解とご協力を得て開催しています。▼ヤマハマリンクラブ・シースタイルジェット - マリン製品 | ヤマハ発動機株式会社
▼レンタルボートはマリンクラブ・シースタイル - マリン製品 | ヤマハ発動機株式会社