ガンダムのビジネスモデルと期待の新作、機動戦士ガンダムAGEの関係
2011.11.05 寄稿者: のま (元記事)「第3話まで見てください、面白くなります!」
というレベルファイブ、日野プロデューサーの言葉を信じてとりあえず見てみました。そして今回第4話を視聴。これまでの感想をまとめてみます。
・ガンダムとしてのAGEについて
ガンダムというのは非常に難しいアニメで、その新作ともなるとものすごいプレッシャーに違いありません。なにせ初代(通称:ファースト)が傑作すぎて続編が作りにくいほど。ガンダムの生みの親である富野監督にしても、初代を超えることができずに今ではガンダムシリーズに原作者のテロップとして出る以外では関わっていません。
それだけ初代ガンダムがアニメ界の金字塔にして、伝説となってしまったということです。
その「ガンダム」シリーズの最新作というわけですから期待が高くないわけがありません。幸い2000年代に作られたガンダムSEED、そして00(ダブルオー)が好評で、ガンダム新作=期待はずれではなく、期待をもっていいという希望を与えてくれました。
しかし期待が大きすぎるのも困りもの。それに「ガンダム」を冠するだけで自由度が非常に狭まり自由な発想で物語を作ることが難しくなります。クリエイターとして一番挑戦しがいがあり、同時に一番やりたくない仕事が「ガンダム」ではないでしょうか。
・ガンダムのフレームワーク(枠組み)の制約
ガンダムのフレームワークとは大きく分けて2つ。1つは物語のフレームワーク。
ガンダムエースでわかるように、ガンダムはすでに物語の1ジャンルとして規定されています。SFが「サイエンスフィクション」として、フィクションの中の1ジャンルから派生したように、ガンダムはSFとロボットアニメから派生した1ジャンルとして緩く定義されています。その定義とは、
1) モビルスーツがでてくる
2) モビルスーツ「ガンダム」は白と赤と青と黄色からなる
3) モビルスーツ「ガンダム」はVアンテナをもつ
4) 地球と宇宙(地球圏)、スペースコロニーが舞台である
5) 人類が宇宙に移住している
6) 敵が人類である
といったところ。00(ダブルオー)映画版はこのうち不文律である(6)をはじめて吹っ飛ばしてしまいましたが。
ガンダムのもうひとつの定義とはビジネスのフレームワーク。
1) ガンダムプラモデル、通称ガンプラを生産販売する
2) ガンダムのゲームを生産販売する
3) その他ガンダムのライセンス商品の販売
ガンダムビジネスモデルの基本は1970年代のロボットアニメ・ビジネスモデルの延長。ロボットのおもちゃを売るための販促がアニメ作品なのです。ガンダムはそのロボットアニメ・ビジネスモデル、販促アニメとしての制約に挑戦した作品、しかし作品性が高くなりすぎて当時のメインスポンサー、おもちゃ会社クローバーを潰した戦犯でもあります。
月刊アスキー(ascii):年間1000億円をたたき出すガンダムという巨大ビジネス ([の] のまのしわざ)(ファースト)ガンダムの途中からビックリどっきりメカが多発、ザクレロとガンタンクの宇宙での戦闘、しかもザクレロのカマ対ガンタンクの手じゃない手での殴りあいに至っては世も末。しかしこれも「毎回やられメカを出せ」という当時のスポンサー(クローバー)の意向です。
この傾向はZガンダムにおいても続き、ガンプラ化が遅れて十分な数、売れなかったので放送延長が決定。しかし物語的に延長することが無理だったので主要メンバーを全員殺し、カミーユは発狂。主人公を入れ替えてZZ(ダブルゼータ)シリーズをはじめてます。
ガンダムの高い作品性はTVシリーズではなく、バンダイがスポンサーとなった後に制作した映画版でおもちゃ性をなくし(合体メカのGアーマー、宇宙でのガンタンクの出撃をカット)完成度が高めた結果です。
現代のアニメ制作では作品ができてから商品企画するのではなく、商品企画して販売準備したうえで作品を作り、放映するというスタイルになっています。つまり放送時にはもうガンプラが購入できるんです。
この商品企画先行はガンダムだけでなく、戦隊シリーズなど特撮を含めて多くの「子供向け」作品はこの形態をとっています。商品企画を先行させ、色々なメディアや商品に展開する「マルチ展開」は2000年代からのビジネスモデルのスタンダード。
「大河原邦男のメカデザイン ガンダム、ボトムズ、ダグラム」が素晴らしかった! ([の] のまのしわざ)・1970年代~80年代:おもちゃ(ダイキャストモデル)
・1980年代~90年代:プラモデル
・1990年代~00年代:OVA、DVD販売
・00年代~:マルチ展開
なにが興味深いかというと、「メカデザイン」という職業が、ビジネスモデルと直結している点でしょう。
アニメが最初「セイカノート」など文房具などのグッズ販売からはじまり、マジンガーZを端に発する「超合金(ダイキャストモデル)」販売を主軸にすることでロボットアニメの大ブームが訪れます。
翻って作品はというと、おもちゃ=ダイキャストモデルを売るための30分の宣伝と化したきらいもあり、それに反旗を翻したのがリアルロボットモノと呼ばれた「ガンダム」という作品です。
そしてガンダムが開拓したのが、超合金ではなくスケールモデルであるプラモデル。実在することを前提に、1/100スケール、1/144スケールとスケールモデルにしたことでそれまでの「おもちゃ」から一線を画すことになりました。
その後ヒーローロボットものが終了します。これはおもちゃのビジネスモデルが立ち行かなくなったことと、エンターテインメントが多様化したことと符合します。
そして90年代からはOVA(のちにDVD)の販売。つまりアニメ作品自体を直接売ることで利益をうるビジネスモデルが出現します。
さらに00年代はそれらを含めてキャラクタービジネスや、ネットを通じたストリーミングなど多種多様なビジネス展開をすることになりました。
ガンダムAGEもそのビジネススタンダードにのっとっています。特にゲームとの親和性を高めること、最初からRPGゲームにすることが決まっており、ゲーム会社として有名なレベルファイブと組んだのも自然の成り行き。もちろんイナズマイレブンやダンボール戦記の実績もあったことでしょう。
しかしどれも「子供向き」。ガンダムといえば大人も納得させる物語展開が売りの一つなのですが、ここは心配ポイント。特にもう大人となったファースト世代にとっては、子供がはまっているイナズマイレブンというのもちょっと心配。
・1話~3話
ガンダムの1話といえば、直面するのが「ロボットアニメ第1話問題」です。
ロボットアニメ第1話問題を乗り越えた! 「輪廻のラグランジェ」第1話視聴レポート #kamojo【ワンダードライビング】そこで問題になってくるのが「ロボットアニメ第1話問題」です。すばらしいロボットアニメシリーズになるかどうかは、この1話にすべてがかかっているといっても過言ではありません。あの「ガンダムAGE」では第1話の評価は微妙、クリエイターいわく「第3話まで見てほしい」と言うほど難しいものです。
この第1話問題の大きな壁は2つ、
1) パイロットがロボットに搭乗する理由付け
2) パイロットがロボットを操作できる理由付け
です。
初代ガンダムではこれを見事な手法で解決しました。
そこに果敢に挑んだのが「機動戦士ガンダム」。それまでの常識をくつがえし、「訓練を受けたことがない」「一般の」「少年」をパイロットにしたのです。そこで問題になったのが(1)です。なんで搭乗するのかと?
特殊部隊の隊員や親族、異星人はあらかじめ「敵が襲来することに備えている」という点で共通しています。そのため「この日がやってきたか」ということで自然に乗ることができます。
ところが一般人である少年はそれまで「平和」を満喫しており「敵が襲来する」「それに対抗するためにロボットに搭乗する」というのはまったく想像しておらず、危険を顧みず乗って戦う強いモチベーションはありません。
この「乗って戦う強いモチベーション」を持たせるのがとても難しいのです。
ガンダムはこれを親友フラウ・ボゥの親族を含む、多くの住民が亡くなるという戦争の現実を目の当たりにし、怒りにうちふるえて制止を振り切ってガンダムに乗ります。
さてここで問題がでてきます。それが(2)の「ロボットの操作」です。
訓練どころか、その存在すら知らなかったロボットをすぐに実戦で使い「初戦を勝つ」までを第一話では描かないといけません。しかし特殊部隊の隊員でもなければ、異星人でもない一般人がすぐに乗って動かせるわけがありません。だってだいたいクルマの免許すらもっていない少年ですよ、モビリティという概念から考えてもそりゃ無理って話です。
ガンダムではこの(2)の問題を「ガンダムの教育型コンピュータ」と「V作戦のマニュアルを拾う」、「ガンダムの設計者の息子で、天才少年として有名」という半分従来の「親族」と「特殊能力を持つ」という要素を使うことで見事クリアしました。
一方で一般人で素人というところをうまく演出、ジーンの「まだよく動けんようです」、テム・レイの「戦い方がめちゃくちゃだ」、そして有名な
「武器、武器はないのか!」
というアムロのセリフで表現しています。
このリアリティがガンダムの第一話が最高にして、30年以上たった今も目標とされている理由です。
さて今回のガンダムAGEではどうだったでしょうか。
ガンダムAGEの主人公フリットは代々モビルスーツ設計の名門アスノ家の後継ぎ。母親を敵、UEの攻撃で亡くしたという過去をもちます。そして復讐のためにガンダムを設計、完成させるのです。いわば、
(1) パイロットがロボットに搭乗する理由付け、(2) パイロットがロボットを操作できる理由付け
を同時に解決したようなもの。
そういう意味ではうまく解決したのですけど、さっそく大きな問題が。それは出撃した次の瞬間のセリフです。
フリット「武器、武器はないのか!」
ちょっと待て!
自分で設計しておいて、そりゃねえだろう、というセリフ。まあガンダム第一話に敬意を表してのオマージュだというのは分かるのですが、やりすぎ。もちろんファースト世代から総ツッコミです。
(第2話)
第2話ではようやく武器、「ビームスプレーガン」とガンダムシールドを装備して出撃です。
ん、ビームスプレーガン?
ファースト世代ではGMの標準装備としてお馴染み。でもなんで「ビームライフル」ではないのでしょう? と思っていたらやっぱりやってくれましたよ。
相手にまったく効きません。
そもそも1話でGMと同じ位置づけのやられメカ、量産型ジェノアスで通用しなかったのは分かっていたのに無策だよなあ、と思っていたら一応これは理由があります。それが今回出てきた夢のマシン、
「AGEシステム」
これは戦いを解析して最適な武器を瞬時に設計、製造するシステム。まあいってしまうと
3Dプリンターのようなもの。
ここでさっそく有効な武器「ドッズライフル」を製作して打ち出します。
ただこの演出、表現の仕方がどうみても、
「今週のびっくりドッキリメカ、発進!」
「ドッズライフル、ドッズライフル、ドッズライフル・・・」
おいおい、いつからタイムボカンシリーズになったんだよ...といった風情。まあ永遠のマンネリという意味では共通していますし、メカデザインはどちらも大河原邦男さんですけどね。
他にも第2話で突然前触れもなく出てきて、フリットの膝上に乗って戦いに参加する謎の少女がすっかりララァ。
「そこ、右」
とエスパーなのか、ニュータイプなのかわかりませんけど、もう2話目にしてガンダム最終話並みの予知能力を発揮。その予知能力のおかげでそれまで14年間負け通しだったUEに対して圧倒的優位にたち、バシバシと撃墜に成功します。いやね、ニュータイプみたいなものは最後の最後にとっといてうまく物語をまとめるためのバズワードとして使うのが王道なのに、いきなりネタバレみたいなものですよ。
そんなわけでとにかく「ツッコミ」ポイントが多くて、どうなのかと思いきや世の中的には
「面白かった」
という声が半数。そして残り半数が否定的な意見、でまさに賛否両論うずまいています。
この相容れない両極端な意見がまさに現代的で、リアルタイムでツッコミながら見ると「面白い」という意見も。
現代はインターネットの時代。たとえ一人で見ていたとしても、横にはネット端末が存在し、それまで一人でツッコんでいたのに2chをはじめ、Twitterなど色々なツールでツッコミながら連帯してみることが。ある意味、
「ツッコミを想定しての演出」
をやっているのかもしれません。そういう意味では非常に現代的、まさに2010年代の作品作りといってもいいでしょう。
第三話までの感想としては、ガンダムのフレームワークにのっとりながらも色々と新しい挑戦をしながら、古い世代には「おいおい」と突っ込ませ、新しい世代には「新しい」と思わせることに成功しています。そういう意味で「つまらない」とは言わせない、継続して視聴させることにも成功しているのではないでしょうか。
第4話はコロニーの避難民をすでにどこかでおいてきた描写がなく連続性が気になりましたが、お話としてはなかなか面白く、うまく物語の立ち上げから、継続へとスイッチしています。特に新キャラの白い狼ウルフが00(ダブルオー)のコーラ・サワー的かつ兄貴分的役割を担っていて、いい位置づけです。とはいえ、いきなり
ウルフのヌードシーン
からはじまるのはどうかと思いますが。ターゲットは子供と腐女子なのか! と思った瞬間です。
どうせヌードシーン(シャワーシーン)を出すんなら、女性にしてほしいし、フラウ、ミライさんにセイラさんのシャワーシーンがあったガンダムの伝統ってもんです。今後の(シャワーシーン)に期待です。男はもういいからね。
その点、「輪廻のラグランジェ」はいいですよ。シャワーシーンは女の子ですから、えっ?
日産自動車がロボットをデザイン!「輪廻のラグランジェ」製作発表会レポート by みたいもん #kamojo【ワンダードライビング】お!海、無駄に活動的な女の子、スク水、女教師。
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