青春よもう一度 Honda AX-1 episode-04 初号機ステムベアリング交換
2020.06.022台揃ってややこしいですが、左のブルーが1987年式の1型初号機、右のブラックが1989年式の2型、2号機です。
まっすぐ進まない
ブレーキOH、キャブOHやタイヤ前後交換、チェーン交換をミュルサンヌでほどこした初号機。さて乗って帰ろうとしたら最初の曲がり角で違和感。その後もずっと轍にとられているような強固な曲がりを感じて直進することが難しいのです。
最初はタイヤの接地が強すぎて路面のカントや轍を拾っているのかと思いきや、高速にあがっても同じ傾向。これは何かがおかしい。
写真をとるために直進状態でハンドルを固定したら、あれ、なんか前後で方向が違う?
一見フロントフォークが曲がっている、傾いているように見えます。
少しだけハンドルを左に切ると、前後傾きが揃いました。よかったステムやブリッジ、フォークが曲がってなくて。
さてこの原因はどうやら中央付近に凹みがあって、ハンドルを最初きるときにその凹みからでるのにある程度力が必要で、セルフステアを阻害していることでした。つまり常にハンドルが若干切られている状態で、左にリーンしてもセルフステアしないので左に曲がれないのです。
ハンドルに力を入れてハンドルを切ればもちろん曲がりますが、いいバイクというのはハンドルは触らずともいいのです。セルフステア大事。
もしかしたらAX-1はもともとこうだったのか、とも思いましたが2号機を入手後にハンドリング確認。やっぱり昔の記憶通り素直なハンドリングだったのでやはりステムだろうとなり再び入庫、メンテ交換してもらって修理完了です。
実にいいハンドリングとマッチしたソフトなサスペンション
在りし日の姿に戻ったAX-1は実にイイ。当時から私は好きでしたが、世間の評価は芳しくなく、むしろ酷評といっていいでしょう。そのため不人気車に分類され、AX-2は出ることなくディスコンとなりました。
デュアルパーパスはオンでオフでもいけるという両刀使いで、このAX-1は見た目はオフ車でもキャストホイールにオンよりのタイヤパターンで、オンロードでの性能が重視されています。ワインディングでもよれないタイヤブロックとがっちりしたホイールは中高速コーナリング時のしっかり感を、そしてソフトなサスペンションがつぎはぎだらけの荒れた路面であっても臆することなく走り抜けることができます。
突然未舗装路、ダートになってもビビることはありません。フロント220mm、リア200mのホイールトラベルはソフトなセッティングとあいまってダートであっても突き上げることはなく、245mmの地上高は大きな窪みや丸太があったとしても越えることができます。
実はこのスペック、現行CRF1100L アフリカツインのSTDモデルを凌駕しているのですから驚きです。ホイールトラベルはF185mm/R180mm、最低地上高が210mmですから20-30mmはAX-1の方が余裕があります。それでいてシート高はアフリカツインが830mm、AX-1が810mmと足つき性も高い。
本格的なモトクロッサーやエンデューロはむしろシート高は高く、最低地上高は高く、ホイールトラベルはもっと長くとなっていますが、いいんです。そういうのは求めていません。アフリカツインと同様、アドベンチャー的な要素とモタードの要素を融合したのがデュアルパーパスなのですから。中途半端上等ですが、中途半端にしてはそれぞれ十分以上な性能を確保していませんか。
不評だったソフトなサスペンションも、荒れた路面は高速道路の継ぎ目でそのいなし方が実に心地いいです。確かにフルブレーキ時のフロントダイブの量は大きく、つんのめるイメージが強いですが、これはライダーの技量の問題。むしろこの大きなピッチングを活かして前後荷重を自在にコントロールしてグリップにつなげるのがいい塩梅です。
バイクとの対話が楽しい、そんな乗り味になっているのです。
当時はほんと、まだみんな若かった。とにかく尖って、速さをもとめて、性能をもとめて。もっと高く、よりよく。バブル経済絶頂に向けての上昇期でもありますから仕方ありません。
高性能水冷DOHCエンジン搭載
AX-1ではその上昇機運はすべてエンジンに詰め込まれています。
空冷1カム4バルブが得意だったホンダ、にもかかわらず新開発水冷DOHC4バルブエンジンが搭載されます。オフロード系でNSシリンダー採用なのは後にも先にもこれだけでしょうか。このエンジンは3000回転以下では振動が大きいものの、4000-6000回転はトルクフルでのりやすく、7000回転以上は瞬時にレッドゾーンまで吹け上がります。
高速道路で100km/h巡航時が6000回転、そこからもうひと伸びしていくエンジンは追い越しもラク。頭打ち感がなくすかっと爽やかです。まあその高性能さゆえに飛ばし過ぎて散ったわけですが。
デザインも作りも丁寧かつきめ細やかで、当時の設計者の息遣いが伝わってきます。実に素晴らしい。ほんと、新機軸のバイクを作ろうとしたんだという気概を感じます。
さて唯一の問題はというと、30km/Lくらい走るはずの燃費がこの初号機は22-24km/Lくらいしか走らないこと。2割くらい悪いのでもう少し頑張ってほしいところです。キャブセッティングで治るのでしょうか?
(つづく)