北海道ロングドライブインプレッション:アバルト595 (5AT) ロングタームレポート
2017.08.21アバルト595ツーリズモリミテッド(5AMT)購入して約半年、6000km走行して今回北海道を周遊したので改めて試乗レポートをお届けします。
・アバルト595ロングタームレポート:アバルト【ワンダードライビング】
パワフルなエンジンとミッションのネガ
以前レポートしたように、日本の都市部、特に東京の市街地では問題外な5速のロボタイズドMT。
ミッションは問題外。アバルト595 (5AT) ロングタームレポート【ワンダードライビング】
しかし信号がなく、高速巡航がメインの北海道においてはこのネガはなりをひそめ、パワフルなエンジンのメリットを享受。シフトダウン、トルクに乗せての追い越し加速は俊敏で、一気にかわすことができます。
また普段は使わないノーマルモード、これは前走車が遅く追い越しができない場面や、他のクルマとランデブーしたときに有用。アクセルを大きく開けてもスロットルは絞られたままで燃費走行が可能、燃費が17km/L程度には伸びていきます。
北海道のワインディングに最適なハンドリング
車高が低く、ショートストロークのサスペンションはこと北海道ではメリットとデメリットの両方を感じます。
特にオンロードでのハイスピードコーナリングにおいてはショートホイールベースとあいまって、少ない舵角でアジャイルなハンドリングを披露、非常に高いスピードでコーナリングが可能。低速コーナー、といってもヘアピンではありませんが、そこではフロントの重さを感じるものの苦手、とまではいかない程度にはこなせます。中高速コーナーが本領発揮、得意といっていいでしょう。
結果巡航速度は圧倒的に高く、どんなワインディングでもスイスイは走ってしまう「さすがアバルト」と唸らせるものでした。
一方でショートストロークで車高が低いこと、さらに40扁平の薄いタイヤで、段差や悪路では底づきする場面も。特に橋の継ぎ目ではドカーンと車体が震えるほどのショックを受けることがありボディによろしくありません。
この原因は車高が高く、重心が高いにもかかわらず、車幅が1620mmと狭く当然トレッドもそれにともなって狭いことから、コーナリング性能をあげるためにタイヤをハイパフォーマンスなピレリ P-ZERO NERO、しかも205/40R17と大径低扁平にしたことにあるでしょう。
タイヤはピレリらしく、サイドウォールはしなやか高めの空気圧でも潰れた状態なのでコーナリング中にGがかかった状態でショートストロークのサスペンションが沈み、タイヤに荷重をしっかりかけた結果、限界性能を使い切ることができます。ただこの状態でバンプがあるともう余力が残されていないためにボディにドカンと衝撃が来てしまうのでした。
意外といけるダート走行
北海道といえばまだまだダートが多く、この短足アバルトでもおのずと突入することがあります。最低地上高はノーマルFIAT500で135mmと言われているので、このアバルトではおそらく120mm程度しかないでしょう。
しかしフラットダートであればそこそこ走れてしまうのと、バンパーのリップ部分が無塗装樹脂になっているので多少の草であればラッセルしても傷が気になりません。
ハンドリングはオンロード同様素直、むしろリアのブレークが早く、よりオーバーステア傾向が強くなり攻め込むともしかしたら面白いかも?
最近アーバンSUVが流行っているが、北海道という土地にはそういうのがサスペンションストロークがあり、タイヤハイトがあり、最低地上高もあるものが合っていることを感じました。
到達時間のフレキシビリティ
旅客の本質は遠くへ速くつくこと。貨物の本質は量を安く定刻に届けること。この二つを混在して考えるとややこしいことになります。
ドイツのクルマはアウトバーンというインフラと共に速く安全につくことを目的に作られていますが、日本車はそういう発想ではないことを今回も痛感させられました。
ほとんどの日本車は貨物車なのです。多くの人員と荷物を安く届けることが第一義。軽自動車しかり、ミニバンしかり、SUVしかり。加速のフレキシビリティがなく、たらたらと走るばかり。約30年前に初めて北海道に来た時によりも、平均速度は落ちています。この原因はとうせんぼ軽自動車、ミニバン、コンパクトにあり、トラックやダンプではありません。もちろん30年前は飛ばしていたやんちゃな世代が高齢化してゆっくり流しているということもあるでしょう。
そんな中、十分な加速力で追い越しができる車両はマイペースで走れるため、到達時間のフレキシビリティを持てます。それがパワフルなクルマの魅力です。
速いクルマはゆっくりは走れますが、遅いクルマは決して速く走れないからです。遅いクルマは追い越しもできず、到着時間が読めず、他車に左右されてしまいます。
FIAT/アバルトはイタリアのクルマですが、アウトストラーダの流れは速いと聞きますので、よりドイツ的な発想なのでしょう。
北海道はその土地柄、ドイツに非常に似ていますが、クルマの走り方を見ている限りこの30年で退歩、より格差は広がった印象です。
安心なブレーキとまっすぐ進む強靭なボディ
軽自動車に毛がはえた程度の大きさで軽快に走れますが、圧倒的に安心感のあるのは直進安定性とブレーキの効き。たった2300mmのホイールベースでむしろ軽自動車よりもショートなのにもかかわらずビシッと直進します。そしてブレーキは4輪ディスク、フロント穴あきローターでタッチよくリニアに立ち上がるブレーキでしっかりと止められます。
駐車場からの突然の飛び出しや一時停止無視で出てくる車両が多い北海道。これを我々は迎撃ミサイルと呼んでいますが、この迎撃ミサイルを回避するのに十分なブレーキ性能でした。
全長3650mmでこれだけの車両を作ってくるFIAT/アバルトの底力に改めてうなされた格好です。
空力洗車
ボディ形状ですが、空力はイマイチで洗車はそこそこ気を使います。
具体的にはサイドスカートからの巻き上げがまだ収まりきってなく虫がつくこと、リアディフューザーはあるが、やはりリアハッチが相当汚れること。
とはいえ、このボディデザインが魅力だから目をつむるしかないですね。