#名車再生シティ (53) 最初で最後のワインディング・インプレッション
2017.04.01よく考えたらレストアに夢中で峠を走っていませんでした。
11月にはミュルサンヌで熟成を重ねたサスペンションに試しに交換。国道1号線を走っただけで気に入りそのまま購入した経緯があるのですが、その後はまったく走らず、今回売却が決まったのでいつもの山坂道までやってきました。
記憶は確かだった
GA2シティが安い、速い、(運転が)うまくなるという3拍子揃った名車であることは、いまさら言うまでもないことですが、「シティはよかったよなあ」というのが美化された思い出ではなく、記憶そのまま、今でも名車であることは間違いなかったことが今回再度乗って証明されました。
さらにミュルサンヌでセッティングされた足回りで峠にきたら、もうこれが素晴らしい。
最初ショックの調整機構、前後とも19番手(20番中ほぼ開放、柔らかい方)で走行していたのですが多少フロントが甘い感じ。
タイヤはアドバンネオバAD05/06で多少古いパターン、ブロック剛性は高くなく、標準的なハイグリップラジアルです。自分のイメージとしてはグランプリM3。
扁平率も60と現代の低扁平率と比較するとマイルドなので、タイヤのたわみが手に取るようにわかります。
フロントショックの調整を19番手から一気に8番手に上げて引き締めたところ、確かにロールが抑えられたのですが、荷重がかかりタイヤがたわむ前に舵角があたるようになり、ブロックに無理がかかるだけで全然フィールがよくなっていません。いわゆるタイヤの肩を使ってしまう状態。
ショック調整
その後15番手まで戻したところ、これがドンピシャ。ロールのかかり具合、タイヤの荷重のかかり具合がマッチし、荷重がかかってから舵角が当たるのでタイヤがしっかりと路面に押さえつけられていることが手ごたえから伝わってきます。
実際にそこから舵角を切り足していっても、きちんと反応しグイグイ曲がっていく上、さらにアクセルをONにすると外どころか、LSDの効果により舵をきっている方にグイグイと引っ張りだしてくれる、まさにFFならではの高いコーナリング速度を体感することができます。
つまり「はえぇぇ~~~~~」ってやつです。
リアのスタビリティは高くてまったくブレークする気配はなく、リアもきっちりと働いている様子。まさしく4輪でコーナリングしています。
その結果としてどうなったかというと、もう峠が安全だし、楽しいし、ワンダフルなドライビング!という感じ。コーナリングライン自由自在。
理想の1台
1.3LのOHCエンジン、100馬力となんてことないスペックの初心者向けエントリーカーが、軽量コンパクトというそのディメンジョンを生かして、FF版レーシングカートのようなダイレクトなハンドリングが楽しめます。
衝突安全性はほぼないし、ABSどころか電子制御は一切ないので、すべてはドライバーの腕次第なのですが、きちんとハンドリングを確保し、ドライバーの意志通りに動くことでアクティブセーフティは高いといっていいのではないでしょうか。
新車情報
当時の開発者インタビューを交えたインプレッション。1988年登場なのですから、なんと29年前ですね。
当時としてもロー&ワイド化したクラウチングフォルムは受け入れられず、バブル絶頂の大きく、豪華へという方向性の前に商品としては成功したとはいえません。
しかし自動車としての正しさ、そしてその軽量コンパクトで維持費が安いのに速いことからモータースポーツで活躍、多くのアマチュアレーサーを生み出した名車であることには間違いないでしょう。そのアマチュアレーサーが今も自動車の運転を楽しみ、子どもたちに伝授していることを考えると、すべて売れ筋の商品しか揃えないのはどうなのでしょうか。焼き畑農業的で、次世代の種をまかないことになってしまいます。
たとえ売れなくても、いや全然売れないのは困りますが、きちんと自動車として正しい姿をアフォーダブルな値段で提供するのは大衆車メーカーの使命だと考えます。
シティを次世代の若者へ
残念ながらシティのような車種は今ありません。そこでこのシティを若者に託すことにしました。24年落ち、21万キロ走行ですがその走りは輝きを失っていません。むしろ、今の鈍重な豆腐か食パンのような形をした移動するコンテナ車の中にあって、輝きは増しています。
若者にシティのようなクルマ。ぜひ大事にしてその価値を、運転の楽しさをみんなに伝えていって下さい。