ホンダ・初代シティでゼロリフト達成! 歴代ホンダ車の空力性能が先進的
2016.03.30
なにげなく2代目シティ、GA1シティのFACTBOOKを見ていたら衝撃的な事実を発見。なんと1986年当時でゼロリフトを達成していたのです。
CITY 1986.10空気抗力係数CD=0.35、 揚力係数CL=0を達成。 トータル・エアロダイナミクス。
空力の向上は、高性能なクルマがどうしても克服しなければならない重要な課題。高速時の操縦性の向上や低燃費、風切り音などの低減に大きく関わってきます。シティは、スラントさせた低ボンネット、28°傾斜させたフロントウインドウ、グリル一体フロントバンパー、接着ウインドウの採用など、全身をフラッシュサーフェス化した空力フォルム。空気抗力係数CD=0.35とハイレベルな数値を達成。高速時の走行性能の向上に貢献する揚力係数CLに至っては、ゼロリフトという驚くべき成果を上げています。
空力性能がいかに大切か、それは空力操安を磨いたNSX typeRの開発に詳しいです。
NSX-R新NSX-Rで圧倒的な速さを求めるにあたり、高速領域の旋回限界と、ブレーキングやコーナーへのターンインなど、クルマに挙動を与えたときの扱いやすさを空力によって追求する、「空力操安」という新たな技術的アプローチを導入。高速での旋回限界を高めることに加え、操縦のしやすさ、すなわちコントロールクオリティを高め、 クルマの性能を引き出しやすくしました。これにより、中・低速で、アンダーステアを抑えるシャシーセッティングを可能にし相反する高速と低速の操縦性を高次元で両立。あらゆるサーキットでの圧倒的な速さを獲得しました。
NSX typeRではマイナスリフト、つまり速度があがればあがるほど荷重が増えることを達成していますが、なんと初代シティターボでは1982年にそれを達成したのです。実にNSX typeRの20年前!
CITY 1982.9■国産車初の「ゼロリフト」。
揚力係数CL=0 クルマはもちろん、タイヤが路面を蹴ることによって走ります。したがって、走行中に揚力が発生すると、タイヤが路面を踏んばる力が失なわれ、走行性をそこない、駆動馬力をロスし、燃費性能も低下させます。
シティターボは、シティが国産車で初めて達成したCL=0ゼロリフトを、高出力化にともなって理想的なバランスに設定しなおしました。シティ本来のすぐれた接地性をさらに高めるため、大型フロントスカートの採用などにより、とくにフロントのCLを新たにマイナスリフトとし、フロント(CLF)=-0.02、リア(CLR)=-0.05としてターボ用に磨きをかけ、高速になるほど路面を這うような安定した走りを身につけています。
2代目シティターボのターボIIでもゼロリフトを達成。
CITY TURBO II 1983.10シティターボIIのスタイリングは、大地に足を踏んばり、いままさに走りださんと身構える"ブルドッグ"のイメージ。みなぎる力が、筋肉となって全身にあふれ出たような、いわば際だった走りの個性が、そのままデザインへと発展しました。
ビッグパワーを象徴するダイナミック・フェンダー、ボディと一体感あるエアロスカート、筋肉の隆起を思わせるビッグパワーバルジなどにより強烈な走りを彷彿させるとともに、ボディ全体をなめらかな曲面で構成した新フラッシュサーフェスボディも採用。
CL(揚力係数)=0「ゼロリフト」に代表される、シティの優れた空力性能をそっくり受け継ぎながら、一見してその並み並みならぬ性能を感じさせる、エキサイティングなシルエットとなっています。
当時のホンダ車は特に空力性能に力を入れており、その他の車種でも「空力性能」が目次に乗っているほど。しかしゼロリフトを達成したのはシティしかありません。Cd値を0.30まで落としこんだCR-Xですら達成できなかった偉業なのです。
CIVIC&CR-X 1987.9 CR-X Cd=0.30 CL=0.10
CIVIC&CR-X 1987.9 Civic 3HB Cd=0.33 CL= 0.02
BALLADE SPORTS CR-X 1983.6 Cd=0.33 CL=0.20
ACCORD 1981.9 Cd=0.37 CLF= 0.12
FACTBOOKを遡ると、どうやらこの空力性能としての数値がでてきたのは1981年くらいから。さらに大事なのはCd値ではなく前面投影面積Aをかけあわせた空気抵抗値(ドラッグ)を最小にすることときちんと見抜いていたことです。
BALLADE SPORTS CR-X 1983.6スポーツフォルムは、 CD×A (空気抗力係数×前面投影面積)で表わしたい。
空力フォルムを語るとき、これまではCD(空気抗力係数)が中心にされてきました。しかし、CD値が小さいだけでは、空気抵抗が少ない実証にはなりません。
一貫してトータルな空力特性を主張してきたホンダは、空力フォルムを語るとき、実質的な空気抵抗を表わすCD×Aにも着目してゆきます。つまり、空気抗力係数×前面投影面積が小さければ小さいほど、空気抵抗が少ないということになるからです。バラードスポーツCR-Xは、このCD×A値0.56という、限界値に近い数値を達成。もちろん、CDも0.33と、世界のトップレベルをマークしています。
GA1シティの CDxA値は 0.62 と小さなボディを活かしてかなり低い数値となっています。
それにしても単なる街車、お買いもの車であるシティがゼロリフトを達成していたとは、本当に驚きでした。道理で高速安定性が高いわけです。
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