DJI Phantom2 初めてのノーコン、墜落、水没、サルベージ
2014.06.03トリプル、いやクワッドコプターだけにクワッドコンボです。これまで一度もなかったのに、初めての海上撮影で突然姿勢が不安定となり制御不能。そのまま木の葉のように左右に大きく降られながら下降し、ぽちゃんと運河へと墜落、水没しました。ええ、海水への水没です。
経緯
ヤマハ・シースタイルの取材にやってきた天王洲アイル。今回はボートの取材ということで運河上で空撮をしていました。
体験すると意外と身近。会員制ボートシェア「ヤマハ・シースタイル」体験試乗会レポート【ワンダードライビング】
1回目の飛行は約8分。運河脇から離陸、運河上の桟橋に停泊しているヤマハ発動機のボート各種を撮影、無事に帰還しています。
問題は2回目の飛行。
1回目の飛行から1時間以上充電、インジケータが満充電を指していることを確認してから飛行開始。
今回は運河から橋をくぐって出航するボートを運河上で追っての撮影でかなりダイナミックな映像がとれました。ボートが遠くになったのでクワッドコプターを引きながら上昇、これにて撮影終了です。撮影時間は約4分。
帰還をしようとゆっくりと高度を下げていこうとしたときのこと。
強風にあおられてかどうか分かりませんが、突然大きく左右にふれるクワッドコプター。たまにあることでその瞬間は心配しなかったのですが、その揺れが収まるどころが大きくなるばかり。
これはヤバイ、とスロットルを下げていたのを全開にして高度をとろうとします。
ところがこの操作に反応せず、クワッドコプターは左右に大きく降られながら、まるで木の葉が舞うように下降をやめません。水面までは数十メートル、落ちて行くその時間は長く感じられました。
結局願いむなしくクワッドコプターはボチャンと落水。海の藻屑となりました...
(水没した方向)
悲嘆の捜索
「墜落したらボートで拾ってくださいね(笑)」とヤマハ発動機さんにはお話していたのですが、それが現実になるとは...気が動転しつつも対応を協議。ボートは全部体験クルーズへ出航して戻るのは40分後。もうじたばたしても仕方ないので、まずは落下個所を探します。落ちた場所が分からないことにはこの濁った水の中ではあてずっぽうではさすがに拾うことはできません。
ここは大型船も停泊できるように水深はあり、逆に岸壁よりは浅くなっており通常のボートでは近づけません。つまり深いところに落ちていたら見えずに回収不能。浅いところであればきっと見えるけど、ボートではサルベージできないという、まさに絶望的な状況。
悲嘆にくれながら岸壁を歩いていると、かすかに白い影が。
ヒトデ型の白い物体、これはまさしくDJI Phantom2!!
ちょうど浅いところと深いところの中間で、ボートでも近づけそうな雰囲気。
必死のサルベージ活動
体験ボートクルーズが終了、ボートが帰港したので、ヤマハ発動機さんにお願いしてジェットボートAR190でサルベージへと向かいします。ジェットボートはジェット推進のため船体が比較的浅く、プロペラが外に出ていないので浅瀬に強く、座礁しにくいとの判断からです。しかもドライバーはベテラン・テストドライバーの松瀬氏。操船は絶対的に安心です。
地上から場所を案内してもらい、松瀬氏のドライブで近づき、ボートフックでひっかけて取ろうという作戦です。
最初私がトライしたものの、水深が深く1mちょっとのボートフックではなかなか取れません。リーチが長いという松瀬氏自らが身を乗り出してひっかけます。
「とったどーーーーー!!」
無事、サルベージに成功! その模様を動画でもどうぞ!
しかし40分以上も海水につかっていたDJI Phantom2が無事なわけがありません。本体からは茶色い液体を出し、ワカメが多少からまっています。
1つのモーターはヒクヒクと動いており、まだ通電しているかのよう。とにかく急いでバッテリーを引き抜きました。そのバッテリーは熱をもっており、明らかに通電したままっぽく、このままでは火災、爆発の危険性がありますので注意が必要です。
水道水で洗浄
とりあえず本体、ジンバル、GoProを水道水でバシャバシャと洗います。どうせ海水に40分以上もつかったのですから、いまさら迷う必要はありません。とりあえず洗って、後でまた分解して洗うこととします。
一番の懸案はバッテリー。洗うこともできず、触るとセルが熱いままでどうにもなりません。目を離さずみていると嫌な臭いとともに煙を出してきたので、慌てて船外へ非難。
炎上しても被害が少ない場所、桟橋の一番端っこに移動しました。
分解洗浄
2時間後オフィスへ戻り、分解洗浄。
ヒクヒクと動いていたモーターはすでに錆びています。どうも電気分解が進んでしまったようですね。
バラバラにして水洗い、逆さまにして乾かします。まあこれで治るとは思えないのですが、一応。
基板が焼き焦げたバッテリー
外見は大きな被害はなさそうなバッテリー。ただ未だに焦げ臭いにおいがするので、思い切って分解することにしました。
蓋をあけると中のプラスティックが焦げています。煙がでてきたのはこれが原因か?
さらに分解をすすめると基板がすべて焼き焦げていることが分かりました。もうこのバッテリーは再利用不可、そうなったらあとはどう処分するかが問題です。バッテリーにはまだエネルギーが残っているのでそのままでは不安。
セルを基板から切り離しました。基板はすべてが焼き焦げています。
セル本体は安定的ですが発火・爆発のおそれは依然あります。そこでとりあえず燃えてもよいように七輪の中に保管。廃棄処分は方法を調べて対応したいと思います。
振り返り
バッテリーは満充電、コンパスも正常、GPS電波も受かっている状態。1回目のフライトは問題なし、2回目のフライトも帰還まではまったく問題なし。帰還途中の突然のノーコンで墜落しました。原因は電波の混信による電子的なものか、強風がキッカケとなる物理的なものかまったく分かりませんが、とにかく初めてのノーコンで墜落、水没、しかも海水でした。裸でジンバルに搭載したGoProも端子が腐食、電源は入るものの液晶、LEDは作動せず。
不幸中の幸いは人身事故にはならなかったこと、機体を回収でき、空撮ファイルもなんとか生きていたことでした。
いくら安定的なクワッドコプターでもノーコンでは即墜落する危険性があることを身を持って思い知りました。そういう意味で、飛行区域の下に人がいないこと、これは飛行の絶対条件ですね。今回は運河上ということで人身的に安全ではあったのですが、墜落したときのリスクは高い空撮として高い勉強代となりました。
機体を回収できたのはすぐにボートが出せる環境にあったこと、そして墜落箇所が特定できたこと。これが運河の真ん中であれば場所特定できず回収不可能、もっと浅瀬であれば今度はボートでは近づけず、ゴムボートを別途用意するなどすぐに回収できなかったことでしょう。
機体はともかくとして、データを回収したいとなると完全に沈んでしまうのは困りもの。浮きを付けて沈まないようにする、沈んでも強力に点滅する防水ライトをつけて場所を知らせる、などの工夫があった方がいいかもしれません。とはいえ、水深5mの運河に沈んだ小さなクワッドコプターを引き揚げるのは容易ではありませんが。
墜落のリスクと隣り合わせであることを理解した上で、今後も気を引き締めて空撮にのぞみたいと思います。
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