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西川善司の「NISSAN GT-R」ライフ 最終回~さらばGT-R 2012年モデル。ようこそGT-R 2013年モデル

2014.02.27 寄稿者: 西川善司元記事

西川善司さんの連載「NISSAN GT-R」ライフがついに最終回。とはいってもGT-Rを降りたわけではなく、なんと水野モデル最終型への買い換え...ここまでクルマと人に惚れこめるのは羨ましいですね。その心境をぜひどうぞ。

CarWatchで2年間にわたって連載させていただいた「西川善司のNISSAN GT-Rライフ」ですが、今回の更新をもって最終回となりました。

西川善司の「NISSAN GT-R」バックナンバーリンク集
http://car.watch.impress.co.jp/backno/longreview/index_c306s1489.html

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西川善司の「NISSAN GT-R」ライフ 最終回
~さらばGT-R 2012年モデル。ようこそGT-R 2013年モデル
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http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140224_636288.html

 水野和敏さんの強い個性が作り上げたこのマシン。
 実を言うと2007年の登場当時は興味はなかったのでした。
しかし、2010年に水野さんに直接お目にかかり、いろいろとお話を伺いしてGT-Rに興味を持つようになりました。

 ロードゴーイングカーとは、結局、加速性能、コーナリング性能、そして高速走行時の安定性こそが重視されるべきであり、「ただ軽くて大出力のスポーツカー」は実は速くはなく、コンスタントに四輪が設置し、必要なときに無駄にならない最大トラクションを掛けることにこそ意義があるという独自最速理論に興味を抱きました。

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 世に言うスーパーカーの大半は、高速走行時を前提とし、高速走行時のエアロダイナミクスを想定してダウンフォースを設計をしています。ですから、ストップ&ゴー直後や、中低速コーナリング時は、トラクションがうまく掛かっていません。

 GT-Rの場合、停止状態から前輪にはエンジン荷重を、後輪にはトランスミッションとデフ(LSD)の重量を掛けているため、ゼロスタート時から十分なトラクションをかけることができます。

 ドラッグレースやゼロヨンなどでスタート時にグリップ力を増すためのタイヤソフナー添加剤をタイヤに掛けたりしますが、アレと同じ効果を「車両内に搭載不可避な重量ブツ」で行う...というイメージですね。

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 車は、走り始めて加速中は荷重が後ろに移るので、GT-Rは走り出すと基本的には四駆を辞めてFR状態になります。そしてコーナリング時やアクセルオフからの再加速時にのみ、再び四駆になります。駆動力は必要な車輪に必要なときに対してかけるという思想です。

 この動的四駆システムの基本コンセプトはR32~R34スカイラインGT-Rと同じですが、スカイラインGT-R時代はベースの車両(ベースのパッケージング)としてスカイラインがあったため、重量ブツがフロントに集まることとなり、この動的な四駆システムを効果的に活用しきれているとはいえませんでした。そう、停止状態では前輪荷重なので、発進直後は四輪を駆動したとしてもFFみたいにほぼ前輪のみで地面を搔いていたのでした。

 R35 GT-Rでは独立車種となったため、この動的四駆システムを効果的に活用するための車体設計(パッケージング)をゼロから行うことが可能になり、ある意味、この動的四駆システムはR35 GT-Rになって、やっと本来の力を発揮できるようになったということができます。もちろん、基本思想はR32~R34スカイラインGT-Rと同じとは言え、センサー類やメカニズムの構成部品自体は進化しているので、経過時間分の技術革新が加味された性能向上もあります。

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 たしかにR35 GT-Rの1.7トンの車重ではブレーキに負担が掛かります。そのためにSUV並の20インチの大径タイヤとFφ:390mm/R:φ380mmの大径ローターを組み合わせた高価な大型ブレーキシステムを組み込む事にいたっています。ただ、100km/hからの急ブレーキで制動距離30m未満で止まれるのはGT-Rくらいと言われています。一般的な車ですとその2~3倍は伸びてしまいます。

 また、R35 GT-Rは前方投影面積が大きいため、高速時には空気の壁に加速を阻まれることになります。なので、世界の名だたるスーパーカーと加速競争をしたときに0-100km/h加速や0-400m加速ではR35 GT-Rが勝てても、0-300km/h加速や0-1000m加速ではじわじわと負け始めます。ここはGT-Rが室内空間を広く取り居住性を意識したピュアスポーツカーではないGTカー的ボディザインが裏目に出ている部分だと言えるでしょう。

 水野氏の口癖は「発想を逆転させる前に本質をもう一度見てみろ」で、彼の開発したこのR35 GT-Rも、氏にとっては、盲目的に信じられていた「軽くてハイパワーな車が速い」という既成概念に囚われず、自分なりの最速理論を表現しただけなんだといいます。

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 最初はあまり興味のなかったクルマですし、賛否があったクルマだったのですが、結果的に、こうして水野氏のお話しを聞いているうちに「おもしろそう」と興味を持つようになり、最終的には「所有して乗ってみたい」と思うようになったのでした。

 やっぱり「モノ」って作り手の姿や想いが見えてくると、途端に興味が湧いて面白くなってくるんですよね。

 まぁ、自分は、単なる1ユーザーではありましたが、この連載をやったことで、この車の魅力が幾ばくかの人に伝わったのであれば、その意義はあったのではないか、と思っています。

 自分はその水野氏が手がけた最後のモデルである2013年モデルで満足していますし、これがベストだとは考えていますが、2014年モデルは、それまでGT-Rを欲しがっていたユーザーに行き届いてしまった後の、再提案モデルとしてはとても素晴らしいと考えています。多くの人はスポーツ走行はしませんし、おしゃれなクーペとして乗りたいという人は多いはずですので、GT要素を強く推しだした2014年モデルのGT-Rはその意味では、新規ユーザーを開拓して行くと思います。

 ただ1つ残念なのは、2014年モデルのカタログから、2013年モデルのカタログには記載されていた「ニュルのタイム計測はチューニングカーではなく、カタログモデルで行う」という宣言が消えてしまったことです。

 下は2013年モデルのカタログからの抜粋です。

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 それもそのはずで、2014年モデルで実現されたと発表されたニュル7分8秒台のタイムも、2014年モデルから追加された「GT-R NISMO」で実現されていたのならばまだよかったのですが、実際には1500万円超のGT-R NISMOに今年の夏発売される700万円超の「ニュル・アタックパッケージ」オプションを装着して初めて実現されたものなのです。つまり、2014年モデルでは、スペシャルチューニングマシンでタイムアタックをしてしまったんですね。

 しかも、日産によれば「路面のいい日本国内のサーキットではサスペンションの特性から考えるとニュル・アタックパッケージを装着しない素のGT-R NISMO方が速い」...というのですから、「ニュル・アタックパッケージ」は、本当にニュルでタイムを出すためだけのパッケージというか「ニュル7分8秒台」というタイムの証をとりあえず製品化しただけという感じです。

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 既に生産車(?)最速の称号はニュル7分切りを果たしたマクラーレンP1ラ・フェラーリポルシェ918に奪われてしまっており、もはやGT-Rはニュル最速ではないわけで、できればこれまでと同じ評価軸のタイムを公開して「1000万円台の量産車の【素】のGT-Rはここまで進化しました」というアピールをして欲しかったと思いました。

それと...今回の記事を読んでいただくと分かりますが、日産は納車時のガソリンをケチらないで下さい(笑) お願いします


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