ワンダードライビング[wonder driving]

乗り物とホビーのブログメディア ワンダードライビング[ワンドラ]

PICK UP

phazer_proj.jpg

ヤマハFZ250 PHAZER(フェーザー)1985年式 レストア記

フェラーリ・チャレンジストラダーレ試乗レポート(4) 結果を求めない、人生という長い道のりを楽しむ

2012.03.27

夢遊病のようにリアエンジン、リアエンジンと唸っております。

DSC_3930

その原因は明確で、フェラーリ・チャレンジストラダーレに乗ってしまったから。まさにスーパーカー中のスーパーカー、公道を走るレースカー。これまでフェラーリは超高級スポーツカー、ニュルブルクリンクのタイムアタックもせず、タイムアタックしたメディアは出入り禁止、乗り心地もよくて内装は豪華、だから走りはいまいちピリッとしないとばかり思っていました。しかしチャレンジストラダーレはまったくその想像とは別物。これだ、これだよ!

競技車に通じるダイレクトな入力(ハーシュネス)、おそらくサスペンションはフルピロボール。しかし乗り心地は悪くなく、減衰力もロールも適切で一般道でもまったく問題なし。なにこの足のしなやかさは、と驚くほど。

それと同時に驚いたのはステアリングの感覚。まったく不自然なところがなくハンドルとタイヤの間に何もはさまってない、ダイレクトな感覚なんです。手ごたえがどうとか、フィーリングがどうというか、そういう言葉が不要なくらい、ハンドルを切ったら曲がる。で、他に何があるってのよ、という位素直なんです。パワステはついているということなので、本当ならなにかしらその手の手ごたえがあるはずなのですが、皆無。私の貧弱なクルマ経験でたとえていうなら、レーシングカートに乗っているかのよう。

レーシングカートはとてもシンプルで、ハンドルに直接ステアリングワイパーがついてて、そこからロッドでフロントタイヤのナックルを押し引きして曲げる機構。そのフィーリングなんです。もちろんミッドシップでエンジンが後ろにのっており、重心がほぼ中央、慣性重量もほぼ中央ということもこの回頭性を助けているに違いありません。そうです、テクニック不要ですよ。曲がるにはハンドル切ればいいんでしょ!的な。

ferrari_challengestradale_029

エンジン音が後ろから聞こえてカッコいいとか、エンジンルームが後ろで透明ウィンドウ下で丸見え、ビジュアル的にいいとかそういうのは二の次で、このハンドルの効きの良さ、素直な感覚、これはまさにリアエンジン車ならでは。

限界領域では運転が難しいとかいろいろ言われていますが、私たちが公道で限界走行なんてできるはずもなく、そうであれば高い限界性能までの懐の深い過渡領域をタップリ楽しむことができます。もうリアタイヤを滑らせながらカウンターステアあてて走る、なんてお年頃じゃないんですね。そうなるとステアをしたときの極上のフィーリング、これがなによりのご褒美です。

実は私、エンジンにそんなに興味がないんです。特にエキゾーストノート。正直爆音系は苦手で、S2000もノーマルマフラーのまま。パワーにもあまり興味がなく、音量はほどほどで、パワーもそこそこ、アクセルへのリニアな応答が一番すき。特にアクセルのツキといわれる、アクセルをポンと入れたときにクッとタイヤが地面を一蹴りするあの感覚。CVTやトルコンATではそれは味わえず、マニュアル車かダブルクラッチミッションでなければなりません。

そんな私ですが、いざフェラーリサウンドを聞いてみると、みんなが惚れる気持ちが分かりはじめました。音量は想像よりも全然静か、もしかしたら「デシベル」という音量単位でいえばそのへんの爆音系マフラーと同じなのかもしれませんが、「音質」という面ではまったく異なります。誰かがエキゾーストノートは「管楽器だ」と言っていましたが、なるほど、楽器と考えるならば納得がいきます。

トンネル内でアクセルを全開にすれば、明らかにトンネル内の音はフェラーリ1台のエキゾーストノートに占有されてしまうほどの音量ですが、室内は音が大きいなとは思うものの、「うるさーい!」というほどではありません。CJミラージュの競技車であれば

うるせーーー!、二度とのらねーーー!!

と助手席で絶叫しても運転席に聞こえないほどなのですが、フェラーリでは

きゃー、素敵! もっと!!

となるのですから流石というか不思議というか、もはや魔法です。

アクセルに対してのツキはそりゃレースエンジン、バウバウ(おれはやるぜ、おれはやるぜ)系でとてもよろしいです。3.6L 425馬力なので街中は2000回転で流すことが可能。4000回転を過ぎるともはや別世界、一気に8000回転オーバーまで吹け上がり、ものすごい速度域にお連れされてしまいます。

自然吸気なのでターボのような暴力的なトルクはないものの、高まる回転数とエキゾーストノート、パワーが調和し軽量なボディが軽やかに加速していく様は、まさに美。これか、官能的といわれるゆえんは!

「絶対的速度」や「加速度」といった数値ではなく、「加速感」という感覚値を楽しむのがフェラーリ。決して速く走るための車ではなく、いや速く走れるんだけれども速く走らなくてもいいという気持ちにさせてくれます。というのも「加速感」は極上のご馳走であり、それをずっと食べていたら飽きてしまうしもったいないというもの。トンネルの中とか、ワインディングの立ち上がりとか、要所要所でポンとアクセルをあけて高まる回転数、エキゾーストノートといった「加速感」を楽しむのが快感です。本当にご馳走様というもの。

もちろんこれはふつうのフェラーリではなく、チャレンジストラダーレなのですから、サーキットでタイムを出すことができるレースカーでもあります。ですから「それっぽい感覚」だけでなく実際に速い、速く走れるという実体もともなうので、そりゃあもう最高ですよ。

セミオートマはオートマ機構を廃止。エンジン保護のためレブリミットで自動シフトアップ、エンスト防止のためのシフトダウンを除いてあとは運転者の意思でシフトアップ、ダウンをしなければなりません。シングルクラッチのF1マチックのシフトチェンジはダブルクラッチには及びませんが、コンマ数秒(最速0.150秒)で完了。これは普通のマニュアルと同程度と考えると、クラッチ操作がなく正確にシフトアップ、ダウンができる分、まさにF1チックと考えていいでしょう。ゲーセンで遊んでいたあのパドルシフトの本物がここにあるんです。

2000回転でも普通に走れる上、8500回転まではじけるように飛び跳ねるタコメーターの針を見るのが最高の楽しみ。そうです、この一瞬が楽しいんです。

ドイツ車が目的地に速く到達するための交通手段、ハンドルが握れる新幹線であるならば、フェラーリは明らかに違います。フェラーリはレーシングカートからはじまって、F1に至るフォーミュラカーの軸線上にあるクルマ。目的地へ速く移動する、ではなく、同じサーキットを何周もグルグル回るためのもの。

若奥様が、

これ(フェラーリ・チャレンジストラダーレ)なら、同じ場所何度もいったりきたりしても楽しいね

と言ったのがまさに当を得てます。

結果を求めない。過程を楽しむ。

ドイツ車であれば、目的地に速く安全に到達するという大義があります。それはアウトバーンがそうであり、アウトバーンを走る高級車がまさにソレです。高速巡航性能がとても大事で、その結果「速く目的地につく」ことが可能になるのです。A地点からB地点までの移動です。

しかしフェラーリのあるイタリアはどうでしょう。もちろん速く走ることはできるし、その結果として目的地に速くつくかもしれません。しかしそれは保証されないのです。なぜか?

道中何があるか分からない、ということ。

まず壊れるかもしれません。形あるもの、いつかは崩れて消え去るものと考えているのでしょうか。故障で止まるかも知れず、その場合は速く到達するどころか、到達すらできません。

そしてもう一つ、もしかしたらいい女がいるかも知れないのです。

イタリア人男性の義務、それは女性がいたら「口説かなければならない」こと。そこに容姿や好みなど無関係。どんな女性であっても、妙齢であれば必ず声をかけてほめなければなりません。そういったイタリア文化の中、道中どんな出会いがあるかなんてわかりません。

目的地に着くよりも大事なことが、そこにあるんです。

その女性はもしかしたら「ワインディング」かもしれないし、「サーキット」なのかもしれません。そこにトラップされたらいつまでもグルグルと同じ場所を回り続けることになりますが、そんなこと気にしません、いや、それが人生ってものです。

ドイツ人が合理性を重んじる時、イタリア人は感情を重んじるのか、

なんてことをトンネルの中に反響するエキゾーストノートを聴きながら考えたりしましたよ。ええ、もうやられっぱなしです。

(続く)


あわせてこちらの記事もいかがですか?

サイト内検索

人気記事ランキング

もっと見る

新着記事

もっと見る

アーカイブ

PAGE TOP