新型スカイライン 350GT HYBRID Type SP 試乗レポート(4):開発者インタビュー(動画)
2014.03.17今回は新型スカイラインを開発した長谷川車両開発主管、車両運動性能開発担当者、乗り心地性能開発担当者の動画インタビュー。
約30分と長いので、以下、インタビューの要約です。
安全性能の進化とドライバーの退化
全方位の安全性能を高める「セーフィティシールド」、アクティブレーンキープはこれまでのアクティブセーフティのレベルを一段高め、自動運転の領域に近いところまで来ています。
一方で衝突防止ブレーキシステムをはじめとするドライバーアシスト技術人気の背景にはドライバーの高齢化による運動神経の衰えや初心者のスキル不足をカバーするだけではなく、そもそも注意を払わなければならない、運転技術を向上させなければならないドライバーが技術装備に頼り、より漫然と運転するのではないかといった危惧もあります。
衝突防止ブレーキが人気だからどこのメーカーもつける、といったマーケットの要求するがままに自動車を開発していて大丈夫なのでしょうか。この点について日産の技術開発の現場はどう考えているのか、とお聞きしました。
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技術者は技術を作りたい側なので、新機能は興味をもってどんどん作ってしまう。
ドライバーの技術を下げていってもいいくらい、と思うほど、技術が全部揃っているから座っていて下さい、というところまで作ってしまいたいという要求もある。究極は自動運転。
一方で運転して楽しいクルマも大事で、楽しむシーンは楽しむ、普通の道は安心して走れるとしたい。
今日は山道を走ろうか(楽しもうか)、というときはレーンをあえてまたぐこともあるでしょう、その場合はアクティブレーンキープ機能をOFFに。
過去、ABS、TRCなどがなかった時代、クルマがスピンするので、ドライバーの技量がないと速度出せなかった(出すと危なかった)。
ポンピングブレーキ、3-4回に分けてするが、今はABSがあるからガツンと踏んでより短くとまれるし、コーナーではDSCで各輪それぞれブレーキをかけることで曲がって行ける。
今は車両の限界性能が上がっている、一般人のスキルがすでに追いついていない。加藤さん(日産テストドライバー)も同じようにいっている。もはやドライバーの技術はいらないんじゃないか? と。
モード切り替え
自動車と自動運転は目的が違うから手段が違う。どちらの技術もひとつの車に入っているから分からなくなる。
ステバイはスポーツモードを用意して、スタンダードはじっくり、スポーツモードは腕に自信がある人向け。車に幅を持たせていく。座ってりゃいい、では魅力的な商品ではない。運転を楽しむ気持ちを忘れず、それをモード切り替えで実現する。
天下のベッテルさんもスタンダードモード。決してスポーツモードを好んでは乗らない。
スポーツモードではギア比を早くしているので切り過ぎてしまうのであえて重くしている。16.4:1、9:1くらい。
遅れを想定して操作しているからすると最初は違和感があるけど、慣れれば遅れがないのは快感になっていく。
ECOはスタンダードと同じ。エンジンが燃費モード。
Personalで何もしないとSLOWなギア比となる。
モードは実際に3つあるけど、現れないのも可哀そうなので、Personalのデフォルトに設定している。
ベッテルの意見のフィードバックはあったが、開発終盤だったために最後の確認くらい。
バッテリーについて
バッテリーは「箱入り娘」。実際に箱に入っているのでそう呼んでいるが、とにかく大事にしなければならない。
電池残量を空、ゼロにはしたくない。ユーザーからすると電池残っているのになんでエンジンかけちゃうの、という気持ちになるが、大事にしないと、すぐに復活しなくなってしまう。生モノなので化学変化で劣化が始まってしまう。
放置はダメ。1カ月放置するのであれば、途中でエンジンかけて欲しい。壊れることはないけれども、始動性など悪くなる可能性もある。
使用しているリチウムイオンの方がニッケル系バッテリーよりも高性能だが繊細。充電と放電がしやすい(大電流流せる)のが特徴。熱に弱いので冷やしているし、お腹へってきたら充電する。
ECOモードは特に電池に負荷をかけて使うために、モーターとエンジンと電池との連携が切り替わる。
電池容量について、一杯になってしまうと回収できてない電気は捨ててしまう。勿体ない。
回生ブレーキはエンジンブレーキよりも効く。ギア比と比例、シフトダウンするとブレーキが強くなる。
電池容量はハイブリッドの中では大きい方で、むしろスペース効率的にもっと小さくできないか検討している。
電池は後部座席とトランクの間に位置しており、重量配分はよくほとんど50:50に近い状態。
乗り心地とハンドリング
スパイラル・サポート・システムを使った新型シートは腰も痛くならず快適。
クルマ全体の乗り心地がよい。凸凹道ではサスペンションがゴトゴトと動くが、乗員に振動は伝わってこない。
ランフラットタイヤは第三世代、縦バネがあがらない、あたりの強さが丸まっている。
ダンパーはダブルピストンを使い、高周波と低周波に対応。車体がよれちゃ困るので剛性を上げてクイックなステアリングに対応。車体がしっかりしたことで、乗り心地もよくなり、ハンドリングもよくなった。
先端技術(制御)があるからベースはどうでもいい、ではなく逆にベースをしっかりさせないと生きて来ない。
スカイラインファン
50代が多いと思われるが、長距離ドライブするときは正直疲れたくないのは年齢層によらない。
頑張っちゃうぞ(運転を楽しもう)というときはスポーツで。年齢関係なく、シーンによって使い分けて欲しい。
セダンファンは年齢層高め。実際にそのへんがターゲットユーザーで、楽なモードも選べるのがいいところ。
4ドアスカイラインGT-Rはあるのか?
オールージュのティーザー映像、出ています。
4ドア・スカイラインGT-R復活の兆し? Infinity Q50 Eau Rouge のエンジンが...【ワンダードライビング】
インフィニティのバッジについて。帰国子女スカイライン
性能、品質がインフィニティで培ってきたものを出来ているので、違和感なくもってきた。
志賀社長いわく「イチローだって大リーグで活躍したんだから、もし日本に帰ってきても巨人(やオリックス)のバッジにはならないだろう?」とのこと。
「走り」は今回ひとつのテーマ。
ベッテルがスカイラインでVDC入れてても、オーバースピードで突っ込んでハーフスピン。
「あれ~」(やりすぎちゃったかなあ?)
とサービス。さすが上手い、しかもナイスガイ。非常にきさく、話しかけてくれる。
自動運転の方向と、運転をする楽しみの両方ないと。
アウトバーンで200km/h超えて走っても余裕。日本では発揮できる場所がないので、性能が勿体ないですね。
まとめ
この新型スカイラインについて
・運転する楽しみ
・安全でリラックスできる移動
を高い次元で両立させていると感じました。特に安全一辺倒、技術一辺倒でそれだけになるとツマラナイクルマになってしまいますが、移動は疲労度が少なく、いざ山道というときには運転を楽しめる上、ハイブリッドで燃費もいい、とよくまとまっています。
そういう意味で「スカイライン」と名前をつけるに相応しい出来栄えではないでしょうか。