日産の現在・過去・未来を伝える大試乗会(3):Infiniti Q50 HYBRID #nissan360
2013.09.14日本名スカイラインとして登場予定のFRスポーツセダン、Infiniti Q50は最新のデザイントレンドと技術が取り入れられ注目度が高いです。
特に新採用のハイブリッドシステム、そして物理的に完全に切り離されたステア・バイ・ワイヤー。ハンドルはたんなるセンサーになっており、電気モーターがステアリングをする方式で簡単にいうとプレイステーションなどゲームのハンドルコントローラーが目の前についているといってもいいでしょう。
ハンドルとステアリング(操舵)は通常物理的につながっていませんが、システムに異常があり電気が遮断されるなどすると、開放されていたクラッチがバネの力でもどってガチャコーンと物理的につながり操舵可能になるということです。これなら何かあっても安心...でもそれならなんでわざわざ切り離したのでしょう?
今でこそ当たり前になったスロットル・バイ・ワイヤー。それまではアクセルからはケーブルでスロットル・バタフライを直接開いたり閉じたりする方式でした。この間をセンサー、コンピューター、電気モーター、スロットルと電気信号と処理を入れることでそれまで出来なかったキメ細かな制御が可能となりました。アクセルレスポンスや燃費・パワー指向を変化させたり、さらにはドライバーによるドライバビリティの差異を平準化できる効果もあります。特にラフなアクセル操作で燃費が悪化するのを防いでくれる効果は抜群です。しかし一方でドライバーがますますレイジー、下手くそになるという弊害もありますが。
ステア・バイ・ワイヤーはその操舵版といっていいでしょう。これまでハンドル操作はロックツーロックが物理的に決められていて、変化させることが出来ませんでした。しかし電気モーターであればそれを変化させることはもちろん、速度に応じて、またドライブモードによって動的に変化させることが可能。
また操舵力、反力も自在にコントロール。スポーツモードでは重く、逆に通常・エコモードでは軽くといったようにです。
さらにアクティブステアリングも可能となります。横風を受けて直進性が悪くなったり、スライドしたときのリカバリーをクルマ側で制御できるのです。いわゆる運転アシスト機能ですが、安全性向上だけでなく、ドライバーの意図に応じてスポーツ性も高められます。
実はこのアクティブステアリング技術、すでにラジコンの世界ではポピュラーになってきておりジャイロセンサーによりヨーモーメントを割り出し、スピンしないように勝手にカウンターステアをあてるなど、ドライバーの意思が車両の動きになるようになってきています。
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ステアリングアシスト・センサーユニット TGU-01【 エキスパートの繊細なステアリング操作を実現して横滑りを防止 】
受信機とステアリングサーボの間にユニットを接続し、マシンのセンターに水平にセット。ユニット内部のジャイロセンサーが車体の横滑りを検知すると、ステアリングサーボに働きかけ、瞬時に細かくカウンターステアを当ててそれ以上の横滑りを防止。直進性、コーナリング性能を高めます。特に後輪駆動車に有効。また、滑りやすい路面でも効果を発揮します。本体のボリュームでカウンターステアの量を調節でき、さらに3チャンネルプロポを使えば、送信機で感度の調整も可能です。
まあスマホに各種センサーが埋め込まれる時代ですから、ほんとセンサーにソフトウェアは安いもの。ラジコンと違い実際のクルマは人が乗るので安全性の確保は命題ですが、それさえ確保できれば、実はこのステア・バイ・ワイヤー技術はセッティング次第で可能性は広がるのです。
ということでステア・バイ・ワイヤー採用のInfiniti Q50 HYBRIDを試乗です。
▼Infiniti Q50 HYBRID 試乗動画
乗ってみるとシステムは生きているのにエンジンはかかっていません。アイドリングストップ、EVモードで低速走行可能。スタートして走りだすとその瞬間エンジンがかかってモーターとエンジンの両方で加速、さらに高回転になるともうひとつパワー感が増して非常にスポーティ。いやピュアスポーツです。
ハンドリングですが、ハンドルは超クイック。SPORTモードだったということもあるのでしょうが、ちょっと切り込み過ぎになる印象。そしてハンドルが重いこと重いこと。センサーだけだからもっと軽い、昔のホンダのパワステ並みの軽さを想像していたのですが、逆に普通のパワステよりも重いです。
ハンドルのクイックさは慣れ次第、ハンドリング自体はまあまあ素直です。DSC ON/OFFではOFFの方が動きが素直になりますが、一方でリアがでてスピンモードに入ってしまうと止まりません。ハンドリングは370Z、Q50 3.7Sと比較して一番素直。もしかしたらモーターにバッテリーといった重量物がリア荷重に寄与してその分トラクションと安定性を生んでいるのかも知れませんね。そしてリアが流れ出すと重くて止まらないと。とはいえDSC ONならそういうことにならないし、全体的にとても好印象でした。
ノーマルの3.7Sはさらにスポーツ。これが日本ではスカイラインセダンとして販売される予定ですが、スカイラインの名前にふさわしいパワー感とハンドリングです。
さてステア・バイ・ワイヤーについてもう少し考えてみると、今現在InfinitiはRedbull F1をスポンサードしていることからベッテルと共同開発をしています。ベッテルはゲーム、シミュレーター世代、プレイステーションのゲームも大好きで、小林カムイとゲーム仲間でもあります。そのベッテルはシミュレーターと実車の差異を知りつくているわけですから、シミュレーターのハンドルのようなステア・バイ・ワイヤーの精度を高め、実車感を出すのは実は得意なのではないかと期待しています。
たしかに古いタイプの人間は人工的に作りだされた反力、手ごたえなんておかしい、といいますけど考えてみればそれはパワーステアリングが付けられた時代にも言われたこと。パワステなんていらない、重ステこそ最高、という原理主義ですが実際にはもはやパワステがないクルマはざっと見渡してありません。時代の進化は止まらないということです。もちろんデメリットもありますけど、それを補って上回るメリットが山ほどあったからでしょう。F1もパワステですしね、時代の進化は止まりません。
(つづく)