日産の現在・過去・未来を伝える大試乗会(16):まとめ #nissan360
2013.09.27
全16回に渡ってお送りしてきた「日産の現在・過去・未来を伝える大試乗会」ことNISSAN360の様子。今回は最終回、総まとめをしたいと思います。
▼ Infiniti EMERG-E (実走行可能モデル)
2.5日間に渡って行われたイベントは試乗会にプレゼンテーション、レセプションのディナーにパーティと盛りだくさんでした。元空港を貸し切り、高級ホテルもほぼ半分おさえるなど規模も空前絶後です。この試乗会を約1ヵ月間、全世界のメディア関係者と販売店の顧客向け行うというのですから、その準備や実行にあたっては相当の苦労に努力があったはずです。
日産自動車、NISSAN MOTORは確かに日本発祥の企業です。しかし構成しているキーパーソンは日本人だけではありません。要所要所で国籍、人種を問わず登用されています。そのためプレゼンテーションは英語が中心。カルロス・ゴーン氏が日産に就任してから大幅なリストラ、そして会議の英語化が行われ日産は日本企業にあって多国籍企業とならざるを得ない運命を辿りました。
スタッフの方と話していて面白かったのが、楽天が社内の公用語を英語にしたことについて、効率が悪い、余り意味をなさないと切り捨てていた点です。日産社員が全員素晴らしい英語を喋れるようになって効率的になった、というわけではなく、必要な時は英語で、日本人同士であれば日本語で、とTPOに合わせて使い分けることで効率化をはかっているというのです。すでに色々な問題点を克服して、1周してきたというわけです。
企業の国際化というのはグローバル企業では一つの命題です。日本企業が世界的企業として、つまりは日本人が国際人として活躍するのにツールとして英語は確かに必要です。しかしそれは単に英語が出来ればいい、ということではありません。「日本人として」英語が使えることが肝心です。それには日本とは何か、日本文化とは何か、そして日本人とは何かを理解し、それを英語で説明できることが大事です。
アメリカのカーメーカーが国際企業になりにくいのは、アメリカ文化そのままを外国に持ち込もうとするからです。これは戦争でも占領政策でも明確です。自分たちのスタンスを外国に持ち込んで、それに合わせようというのです。これをglobalizationといいます。
一方ヨーロッパは異文化が大陸でせめぎあっているので国際的になりやすいです。これを internationalizationといいます。
この二つは似ており、アジアの辺境の島国、単一国家、単一言語の日本人にとってはなかなか分かりにくい差ですが、明確に異なります。
アメリカのクルマが世界的に受けないのは周知のとおり。一方ヨーロッパメーカーに日本メーカーは国に合わせて自動車の仕様をかえ、多種多様なニーズに応えています。
世界的にみれば、カーメーカーの数はまだまだ多く、今後も経営統合など再編成があることでしょう。その時生き残るためにはどうしたらいいのか。そこまで考えて振る舞わなければなりません。特に内需の拡大が見込めない日本のカーメーカーにとって、新興国への対応は急務です。
今回、nissan360のイベントと通して感じたのは、日産自動車はこのinternationalizationは readyだなということです。国に合わせて自動車の仕様を作りかえる、というプリミティブな話だけではなく、組織自体がトップが単に外国人というだけではなく、全体的に多国籍化しているという実感です。
例えば Juke-Rは JukeにGT-Rのエンジンとトランスミッションを載せた改造車ですが、この件はヨーロッパ日産が開発部隊には知らせず、うまく根回しをして実現したとのこと。そして大きな反響を呼んだのは周知のことですが、それを実績として最終的にお墨付きをもらうという、流れでした。ヨーロッパ人はこういった、根回しが得意ということ。大衆を味方につければこちらのもの、ある意味民主革命的でもあります。
ガバナンスの欠如ではないか、と思う節もありますが、もう世界のスピードは一極集中で本社から全体をコントロールという旧態然とした方式では追いつかない時代に突入したということです。アメーバ経営とでもいえばいいのでしょうか。
元々会社組織というのは軍隊の組織構造を模して造られているのですが、その軍隊にもその流れは来ています。戦車にしても、戦闘機にしてもこれまでの個々の戦い方ではなく、情報をネットワーク化することでそれぞれが役割を果たす時代に来ているのです。
そんな多国籍、国際企業の日産は、もはや日本人だけのものではありません。むしろ日本人が日産という国際企業のなかで、国際人として活躍している、といった領域にたどりつくのは時間の問題。たまたまその本拠地が日本の横浜にある、というだけの話です。
新しい流れは企業と消費者との間にも生まれています。その象徴的なのは、今回私が「ブロガー」として招待されたことです。
通常メディアといえば自動車評論家を中心として雑誌社やTVなどマスコミを指します。素人に一番近い「ブロガー」がこんな大規模イベントに呼ばれるのは異例中の異例です。
ただ興味深いことに、日本以外、海外のメディアはその半数がもはやWEBメディアになっているということで、いかに雑誌というビジネスモデルが苦しいかを表しています。WEBメディアのビジネス化は主に広告収入ですが、日本に比べて外国はWEB広告の単価が桁違いに高いため、収益モデルが成り立つのでしょう。そうなると動画や写真がふんだんに使え、場所を問わず見られるWEBメディアは今後増えることがあっても減ることはないです。
日産自動車は実は企業ブログをブログ黎明期から立ち上げ、古くはホームページをカーメーカーの中で先んじて公開するなど、新しいジャンルへ挑戦する伝統をもつカーメーカーです。情報の流れも今後変わっていきますが、それをいち早くキャッチアップしていく、チャレンジするという姿勢が一貫しています。
波乱の世の中で「安泰」という言葉はないと思いますが、今回のプレゼンテーションを見る限り、いわゆる「お祭り的で中身はスカ」ということはなく、きちんと実がぎっちりと詰まっていて、日産の進撃は続く印象でした。まさに進撃の日産。
個人的な収穫はNoteがよく曲がること、IPLがベストハンドリングだということ、そしてLCVが思いのほか楽しいことでした。今後の日産にとても期待しています。
▼ ワンドラ・ベストハンドリング賞 Infiniti Q60 Coupe IPL
▼ ワンドラ・ベストコンパクト賞 Note 1.5ディーゼル 5MT
▼ ワンドラ・ベストLCV NP200賞