オリジナルOHLINSサスペンションキット「ワンドラ・カスタム」製作記(4)減衰力20段調整機構によるセットアップ
2012.07.20現在夏発売に向けてオーリンズサスペンションキット「ワンドラ・カスタム for S2000」を開発中です。ご存知のとおりオーリンズサスペンションには20段の調整機構があり、減衰力を調整してハンドリングや乗り心地を変化させることができます。
今回はこの減衰力調整方法、番手の出し方について。
▼オートモーティブ用サスペンション| オーリンズショックアブソーバー[ÖHLINS Advanced Suspension Technology]
【伸び側調整】
オーリンズDFV(Road&Track)は伸び側のみ、いわゆるワンウェイ(1way)調整となっています。といっても実際には縮み側も連動して多少変化しますが、とりあえず無視して構いません。
【20段調整の仕方】
▼調整機構・セッティング |オートモーティブ オーリンズショックアブソーバー[ÖHLINS Advanced Suspension Technology]
サスペンションの上、倒立式の場合は下に「ダイアル」がついています。このダイアルを回転させることで調整します。
まず最初、右に一杯回して締め込みます。この状態(0番)がもっとも減衰力が強くなります。左に少し戻すと「カチッ」というところがあります。これを「クリック」といいますが、1クリックさせたところが「1番」。同じように左に回して「カチッ、カチッ」と戻していって「2番、3番」というように調整します。番手が大きくなればなるほど、減衰力が弱くなります。
標準の番手は 7番です。
20段階調整なので20クリックすれば20番になりますが、それ以上左に回しすぎると不都合が起きることもあるので、最大に緩める場合でも20番にとどめておきましょう。
【調整幅の変化】
少ない番手の方が変化が大きく、番手が大きくなると変化が小さくなります。つまり2番と3番とでは走りが激変しますが、15番と16番とではあまり変化しません。
セッティングの場合、少ない番手であれば1~2段づつ、大きな番手であれば2~4段づつ大きく変化させて動きの変化を見ます。
以上が調整の基本です。
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【実際のセッティングの仕方】
調整すると減衰力が変化するのは頭では理解できますが、セッティングを煮詰めるのはまた難しいものです。そこで実際にワンドラ・カスタムで行ったセッティングメモを元に、調整の仕方を参考までに公開。
(F R コメント) F 4番、 R 8番からスタート4 8 街中、ピッチングあり、リアの減衰が弱い。バネが勝ちすぎている?
4 6 リアのゆらゆらが少し収束、まだ(減衰が)足りない
今度はフロントも締め込む
2 6 リア仕事せず。フロント負担大きい。横羽線の継ぎ目でピッチング、乗り心地よくない。
段差が入っていかない(フロントの縮み側が高い)ため、ピッチング
峠ではフロントタイヤのスキール音がひどい。フロントロール大きい(伸びが弱い)どうにもリアが仕事してないので、フロントの荷重をリア側に移すべく逆にフロントを緩めることに。
8 6 リアが仕事しはじめた。フロントがまだ多め。ロール全体的に大きめ。ハンドリングは良好。
フロント荷重が対角のリアへ移る。
ただしふわふわ感がでてくる。
高速でピッチングが出ている。フロントに合わせて、リアも緩めてみる。
8 9 多少柔らかい、横羽線ピッチング少なくなったがまだ不満。
多少フロント逃げる、ループで舵角を足さないといやいやする。
アクセルON/OFFでコーナリング半径が大きく変わる。
デフの作動が気になる。8 7 リア堅い 首都高(雨)
ゴトゴト感が出る。乗り心地も固くなる。乗り心地面で締め込む方向はない。
8 12 収束しないが飛ばない、煽られにくい。小刻みな揺れ。
中央高速、直線が乗りやすい。ふわふわ感。
デフが気になる。作動が激しい。
雨の山道、コーナリング中の動き激しく収束しない。
アクセルON/OFFでコーナリング半径が大きく変わる
アンダー強くなる。アンダーオーバーが激しい。
リアのロール剛性が弱くなった。乗り心地を優先するとハンドリング面で問題がでるため、乗り心地をいったんおいといてハンドリング面でのバランスをみることに。
7 5 山道、リア良い感じに動く
5 5 山道、コーナリング速い(高速コーナー)
低速コーナーだとフロント逃げようとする(リア強い)が、許容範囲。
乗り心地はひどい。ピッチング、突き上げはないが、突きおろし、縦方向のゆれ。
トンネル内ピッチング。
5 3 アンダーが強くなった(ターンイン後)、低速コーナーの回り込み(step3)
5 4 多少弱くなる傾向だが大きくは変わらず
セッティングは気になる方から初めて、フロントをやって、次リアやって、またフロントやって、という繰り返し。今回はリアの乗り心地が気になったのでリアからいじりましたが、通常はハンドル操作、ハンドリングに直結するフロントから行います。
乗り心地面とハンドリング面は相反するためその妥協点を探るのが難しいです。今回のセッティングでは乗り心地面では フロント8番、リア12番あたり、ハンドリング面では F5番、R5番が良かったという結果です。
走るステージによって乗り心地は変わるので、たとえば横羽線に合わせる、山道に合わせる、といった自分の走行ステージに合わせて調整するのもアリです。私はよく停車して番手を調整します。
ワンドラ・カスタムとしては乗り心地とハンドリングを高い次元で両立したいため、今回の結果を受けて、もう一度「仕様変更」をすることにしました。「仕様変更」により番手で調整しきれない領域の減衰力を変化させることができるからです。
オーリンズサスペンションの良いところは、このようにきめ細かな番手調整が可能な上、オーバーホール、仕様変更が可能なこと。走るステージの変化や自分の感覚の変化など環境変化に合わせて自分好みの仕様にすることができる点。
ワンドラ・カスタムもあくまでも一つの仕様にしか過ぎず、最終的にはユーザー個人での調整、さらには仕様(変更)があると思います。そのベースとなれば、幸いですね。
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